いちいち「風評被害払拭のため」って付けないほうがいい
竜田 もっとも、「風評被害は全くない」とまで言ってしまうと語弊があって、外国とかには実際にあるし、あとは贈答品ですね。贈ろうとする側が「相手が嫌がるかも知れない」と気を遣って福島県産品を躊躇しちゃうみたいな。ギフトには特に風評被害が根強く残っているので、「風評なんて全然ない」って言っちゃうのはちょっと乱暴かもしれない。
ただ、それでも大きな影響はないはずなので大騒ぎしないほうがいいんじゃないかな。丸10年だからいろいろ話題にはなると思うんですが、そこで「まだ残る風評被害が──」とか言っちゃうと、それ自体が風評被害を大きくすることになる。復興庁さんも「風評被害払拭のために──」とか言ってますけど、何かをやるたびにいちいち「風評被害払拭のため」って付けないほうがいいですよ。ただ福島のものが旨いんだったら「旨いんだよ」って言う、それだけでいい。
細野 なるほど。「福島のものは旨い」それだけだと。
竜田 単にそれを食ってる姿を見せればいいってことなんだと思いますよ。中間貯蔵施設の除染土の再利用問題もありますけど、その除染土が膨大な量になってしまったことに関して、細野さんにちょっとお伺いしたいことがあるんです。こう言っちゃうとあれですけど、「線量1ミリ(追加被曝線量を年間1mSv)まで下げる」っていう当初の約束は、あれって正直、言いすぎたと思ってるんじゃないですか。
「1mSv目標」は言いすぎだったのか
細野 そこは2011年の夏から秋にかけて、ものすごく悩んだところなんですよね。除染を始めるにあたって、当事者である福島県の理解と協力は必要不可欠だった。そのための話し合いの中で、やはり「目標1ミリ」を福島県側が強く望んだという事情はありましたから。
竜田 当時の福島のこともそうだし、規則もそうだし、いろんな圧力があったのは非常によく分かります。
細野 私が懸念したのは、1ミリを目標にすることによって、「1ミリにならないと安全じゃない」、もしくは「1ミリにならないと帰れない」という議論につながってしまうことだったんです。実際、竜田さんも作業員の時には1ミリを年間どころか1日で浴びたりしているわけじゃないですか。それでも問題ないわけですよね。1年間で1ミリだから、よっぽど影響が小さいんですよ。
竜田 1ミリくらいでは健康に何の影響もないです。
細野 そうなんですよ。除染の目標を1ミリと決めた時に、安全性の基準や帰還の基準とは全く違うんですと言い続けたんだけど、なかなか伝わらなかった。
竜田 全然、伝わらなかったですよね。
細野 結局、帰還をするときのいろんな反対運動にもつながってしまったし、安全性を懸念する意見の増加にもつながりましたよね。
竜田 その誤解を解くためにもう一回、何か発信される予定はないですか。