東京電力福島第一原発の事故から、10年が経った。当時、原発事故収束担当大臣だった細野豪志氏が今あらためて、関係者を訪ね、事故を検証した。原発処理水の問題、放射線の健康への影響、隣接自治体の現在――。それらの事実を気鋭の社会学者・開沼博氏と共に読み解いたのが、『東電福島原発事故 自己調査報告 深層証言&復興提言:2011+10』(徳間書店)だ。同書より、細野豪志氏と、マンガ『いちえふ』(講談社)の作者で、原発作業員でもあった竜田一人氏の対談を抜粋してお伝えする。(全3回の2回目。1回目3回目を読む)

細野豪志氏 ©️文藝春秋

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現場では、世界の最先端ロボットが活躍

細野 放射線量が高くて人が入れないところで健気にロボットが動いていますよね。「いちえふ」の廃炉作業では、そうした先進技術が現場での試行錯誤と実験を繰り返しながら、成果にもつなげているんですよね。

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竜田 そうですね。本当に、リアルな実験場だと思いますよ。ただ、失敗したときに「ロボットの回収はどうすんだ」って事態はたまに起こるので、その辺をもうちょっと考えながらやったほうがいいなとは思うんですけど。いろんなものが開発され投入されて、実際に成果も出しているので、言っちゃ悪いかもしれないですけど、見ていて面白いっていうところはありますよね。

細野 実験フィールドとしては非常に興味深いと思います。ただ、意外と初歩的なところはまだまだローテクで、例えば、ロボットを現場まで運ぶのは人力でやっているそうですね。

※写真はイメージ ©️iStock.com

竜田 ロボットはちょっと条件が変わると対処できないことがあるので、しょうがないですよ。もうちょっといい手はないのかなとは思いますけどね。それでも、ずっと工夫しながらやってきているんだから。四足歩行のやつがもうちょっと使えるようになってくると、変わるかなっていうのはあります。

細野 世界の最先端ロボットが活躍して、そのデータのフィードバックからさらに多くの技術開発につながるわけですからね。

竜田 仮定の状況を想定するトレーニングとは違って、現場ごとの課題が一つひとつ具体的にあるんで、わかりやすいですよ。「ここに行って、何かを取ってくる」「このスイッチの、ここを見る」とか。そうした細かい作業に特化した専門的なロボットが作られていくっていうのは、「これどうすんだ」っていうことへの答えが続々と出てきたりするわけで、非常に面白いっていうか。