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地震に耐え抜いた、築400年超の宇土櫓

「第三の天守」と呼ばれる三重五階地下一階の宇土櫓が無事だったことは、熊本城を愛するすべての人々がもっとも安堵したところでしょう。未曾有の災禍に耐え抜いた築400年超の宇土櫓はたくましく、熊本人の不撓不屈の精神を体現しているようです。

 接続する続櫓は全壊しましたが、全国屈指の現存三重櫓が持ち堪えたことは奇跡的。ただし、基礎の石垣や地盤の沈下で櫓内の柱に損傷もあるため、修復は必須。天守の復旧がひと段落した今後、城内の被災した現存櫓を含めて修復の順番や方法が慎重に議論される予定です。

現存する宇土櫓。続櫓は全壊した(2020年12月14日撮影)。
現存する宇土櫓。第三の天守とも呼ばれる(2020年12月14日撮影)。
倒壊は免れたが修復が必要だ(2020年12月14日撮影)。

江戸時代の石垣など、新発見が続く

 熊本城は国指定の「特別史跡」です。92%が国(財務省ほか)の所有、熊本市が管理団体となっているため、特別史跡内の石垣を修理するための回収作業も簡単ではありません。5年経った今でも崩落した石垣がそのままなのは、一度撤去してしまうと積まれていた石の場所がわからなくなるなどの理由があるからです。現存櫓などの国指定重要文化財の建造物も、貴重な文化財を後世に残すため、調査・研究が行われ、慎重な協議のもとに地道な歩みが続けられています。

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熊本市役所展望ロビーから見る熊本城(2020年12月14日撮影)。

 ただ、天守の解体調査では天守への進入路となる石垣が確認され、城内では江戸時代の石組や礎石等の新発見が続くなどの明るい話題も続いています。謎が解明され、熊本城の新たな価値も生まれることでしょう。熊本城の新たな歴史は、着々と刻まれているようです。

 訪れるたびに驚くのは、ボランティアガイドの方の多さです。熱心に聞き入り、輝く眼差しで熊本城を見上げる子供達の姿に、一筋の希望の光を見ました。新たな文化と歴史がつくられていく過程を見守り続けたいものです。

被災前。現状と比較すると、多くの石垣が崩落し、手前の櫓群も傾いているのがわかる(2012年5月撮影)。

撮影=萩原さちこ

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 熊本城をめぐる旅の模様は、「文藝春秋」3月号の連載「一城一食」に掲載しています。