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小島秀夫が考える「VR」の可能性
VRは、フィクション、ドキュメンタリー、アートという既存のジャンルすら融合し、観客が感じるリアルの意味を変える可能性すらある。
特にドキュメンタリーは、映像のリアルをいち早く刷新するかもしれない。現実に起きたこと、起きていることを観客に伝えるために、実際の現場に赴いて現実をカメラで切り取る。しかし、VRの枠のない360度の映像は、圧倒的なリアルさで観客に出来事や物語を体験させてくれる。フレーム内に囲われた「あの人」や「あの戦場」や「あの事件」ではなく、「この人」や「この建物」を含む「この場所(アトモスフィア)」そのものに出会わせることができる。その新しいリアルは、フィクションのリアルも革新していくはずだ。
ゲームには、映画にはないインタラクティビティという要素がある。これとVRの融合は、誰も体験したことのないエンタテインメントを創造する可能性を秘めている。それは映画やゲームという枠を超えた新しい何かだ。
映画の側からは、その革新の試みが始まっている。私は、ゲームの側からその革新を始めようと思う。
『2001年宇宙の旅』の猿は、モノリスに触れて人類へと進化した。やがて人類は道具や技術を手にして、宇宙へと旅立つ。我々は、デジタル技術というモノリスを使って、新たなリアルを創造するために旅立つ。