「骨はきれいに切れたが、胴体側の腕の腱が…」
舎弟に男の腕を押さえさせ、二の腕のあたりに刀を振り下ろしました。骨はきれいに切れましたが、胴体側の腕の腱を断ち切ることはできなかったようで、ぎりぎりで腕はつながっていました。腱の張力がそうさせたのでしょうか、ちょうど『おそ松くん』の「シェー」の形に、腕が跳ね上がりました。切断面からはホースで水をまくように大量の血がでていました。
その様子を見て、「これは死ぬだろうな」と思い、舎弟に首を掴んで固定するように指示しました。舎弟は「首を切るんですか」と怯えたような声で尋ねるので「切る」と答えました。その場には組長の息子も残っていて、2人は愕然とした表情を浮かべていました。
思い切り日本刀を振り下ろすと、ガツンという手応えがして、刃が首の骨と骨の間に挟まるようにして止まりました。腕を切った時の脂で切れ味が鈍っていたのと、首というのは想像以上に切断しづらい構造であることが問題のようでした。
今度はテーブルに頭を押し付けるように固定して、もう一度刀を振りおろそうとしました。事務所のドアが開いたのはそのときです。組長や幹部たちが部屋に飛び込んできて、私は組長に蹴飛ばされ、数メートル吹っ飛びました。そして何人もの男たちに羽交い締めにされたのです。
組からは「自首しろ」と言われて
この組では、電話のワンプッシュで組員全員に緊急連絡が届く仕組みがあり、状況をまずいと思った組長の息子が連絡をしていたようです。
結局、私が起こしたこの事件で組長を含めた十数人が逮捕され、私も指名手配されました。
私は逃げ切る自信がありました。もともと橋の下などで寝泊まりしていた根無し草です。交番の襲撃などの事件も多く抱えていたので慣れていました。しかし、組からは自首しろと言われます。上部団体から圧力がかかっていたようです。出所したら幹部にするとも言われました。
私としては、自分はヤクザに向いていないから幹部になどなりたくないと考えていました。もともと学校の画一的な圧力が嫌で不良になった身です。灰皿のマナーやお茶の出し方など、決まりごとが数多くあるヤクザの世界はそれよりもはるかに厳しく、私にとっては馴染むことのできない世界でした。
しかし、最終的には説得に応じ、弁護士とともに警察署に出頭することになりました。(#3へ続く)
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