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「鍵屋を監禁して教えさせた」事務所破りで10億円を盗んだ半グレ「怒羅権」元幹部のピッキング技術

『怒羅権と私 創設期メンバーの怒りと悲しみの半生』#3

2021/02/20
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 また、私が逮捕された後の2003年に特殊開錠用具の所持などを禁止する「ピッキング防止法」が生まれますが、それは私の影響が大きかったのではないかと思っています。

 ピッキング以外にも、さまざまな泥棒の手口を学び、自分自身でも考案しました。

 いくつか例を挙げたいと思います。

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火災報知器にカメラを仕込んで「金庫の番号」を盗み見る

 自動車は盗難防止のために振動や衝撃を与えるとけたたましいアラームが鳴るようになっていますが、これを回避する方法があります。というのは、自動車はある種の振動にはアラームが鳴らないのです。それは地震です。確かに、地震大国の日本で地震のたびにアラームが鳴っていたら、街中がうるさくてやっていられないでしょう。

汪楠氏 ©️藤中一平

 地震というのはP波とS波という特殊な波を発生時に生み出すのですが、当時、車の警報機はこの波のパターンだけには反応しないようになっていました。そこで、このP波とS波と同じパターンの波を生み出す機械を使うことで、車を安全かつ簡単に盗むことができました。

 盗聴や盗撮の技術も磨きました。この頃の秋葉原には、犯罪にしか使いみちのないような電気部品を売る店がたくさんあり、集音マイクや小型カメラなど、役に立つものが簡単に手に入ったのです。そうした道具に詳しいマニアたちと友達になり、さまざまな改造方法を学び、犯罪に応用しました。

 例えば、ある会社に空き巣に入る計画をたてると、高性能の指向性マイクをつかって社内の音を徹底的に集めます。というのは、高齢な経営者に多いのですが、金庫をあけるときにわざわざ番号を口に出していう者がいるのです。それを聞くことができれば後は簡単で、夜間にピッキングで侵入し、金庫を開けるだけです。

 火災報知器に隠しカメラを仕込み、会社の人間が金庫を開けるときの手元の動きをすべて撮影してしまうということもやりました。報知器に仕込めるくらい小さなカメラだとピント合わせに難があるのですが、改造を繰り返し、どんな角度や距離でも金庫の番号がはっきりと見えるカメラをつくりだしたのです。

 いずれも当時としては斬新な手口で、裁判ではどのように犯行に及んだのかを追及されることになりますが、私の答弁は大いに注目を集めました。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

「鍵屋を監禁して教えさせた」事務所破りで10億円を盗んだ半グレ「怒羅権」元幹部のピッキング技術

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