新型コロナウイルスの感染拡大で移動に制限がかかり、行動範囲がもっぱら自宅の近所だけ……ともなりがちなこの頃。家の周りを歩いているときに「あれ、こんな建物あったっけ?」とこれまで気がつかなかった風景を発見した人もいるのではないだろうか。それが奇抜な建物なら、なおさら印象に残るだろう。
そんな、思わず二度見してしまうような不思議な建物を紹介しながら、豊富な写真と解説で「なぜ不思議なのか」「建築としてどこがすごいのか」を解き明かしていくロングセラー『日本の不思議な建物101』(エクスナレッジ)より、東京近郊の“ナゾの建物”を抜粋して紹介する。
(全2回の2回目。#1を読む)
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曲がった羊羹のような物体
■ホキ美術館
設計:日建設計
竣工:2010年
住所:千葉県千葉市緑区あすみが丘東3-15
地上1階・地下2階
空中に飛び出したキャンチレバー部は、約30m。曲がった羊羹のような物体が折り重なったような建物は、入口からひとつながりの一筆書きで巡ることのできる3層の美術館となっている。
内部空間は写実絵画と鑑賞者が向き合えるよう、究極のシンプルさが追求された。跳ね出し部分を含む1階のギャラリーは100mにわたる鋼板構造で、主に溶接で組み立てられている。
こうしてできた継ぎ目のない鉄の壁には、ピクチャーレールやワイヤーなしで絵画や説明の取り付けが可能になった。天井に開けられた無数の小さな孔には白色と暖色のLED展示照明が仕込まれているほか、空調システムも一体で組み込まれた。すべてに辻褄を合わせながらの大胆な形状で、建物自体がコレクションと言える。