新型コロナウイルスの感染拡大で国と国との間の往来に制限がかかり、海外旅行も困難になってしまった昨今。見知らぬ外国で個性的な形の建物と出会う……なんて瞬間も大きく減ってしまった。
一方で、思わず二度見してしまうような不思議な建物は日本にも多数存在する。そんな全国各地の“ナゾの建物”を紹介しながら、豊富な写真と解説で「なぜ不思議なのか」「建築としてどこがすごいのか」を解き明かしていくロングセラー『日本の不思議な建物101』(エクスナレッジ)より、東京近郊の建物を抜粋して紹介する。
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この異様な存在感…「不思議建築の帝王」
■八王子セミナーハウス本館(大学セミナーハウス)
設計:吉阪隆正+U研究室
竣工:1965年
住所:東京都八王子市下柚木1987-1
地上4階・地下1階
コンクリートのクサビ状の塊が、地面に突き刺さったような姿。見上げると現れる目のモチーフ、荒々しいコンクリート打ち放しの壁面にランダムに穿かれた窓、等々……。大学紛争の激しかった1960年代に、都内の複数の大学が共同で設立した研修施設である。
不思議建築の帝王は、八王子の小高い山の頂でじっと建ち続けている。実際に訪れると写真で見るよりもコンパクトに感じるが、異様な存在感は圧倒的。1・2階は施設管理の部屋、3階はロビーと宿泊室、4階は大食堂という構成。3階には渡り廊下が刺さる。
上階に登るにつれて段々と空間が開けていき、食堂からの眺めと開放感は清々しい。末広がりで、形状の通り今でも「斜め上」を行く建築だ。