イオンの創業の地である三重県には、当然ながらイオンの数が異常に多い。食品に特化したスーパーマーケット業態の「イオン」「イオンスタイル」の出店数だけをみれば北海道の37店舗がトップだが、人口に対しての出店数は三重県が新潟県に次いで2位になる。三重県が新潟県の約半分の面積しかないことを考えれば、この店舗数は多すぎる。東京都(17店)よりも多く、出店数トップ10の都道府県で、政令都市がないのは三重県だけである。

「イオン」「イオンスタイル」の出店数トップは北海道だが、人口に対しての出店数では2位になるなど、三重県はまさに“イオンのお膝元”(写真はイメージ) ©iStock.com

 さらにイオンの源流である「岡田屋」の誕生地である三重県四日市市は、イオンの密集地帯といってもいい。イオン日永店、イオン四日市尾平店、イオン四日市北店の3店舗が31万人の都市に集中し、72万人の相模原市(2店舗)、政令都市の静岡市(1店舗)と比較しても、イオンの多さが目を引く。現在、イオンは千葉県に本社を置くが、商売の原点である“お膝元”といえば三重県四日市市であることは、これらの数字が物語っている。

お膝元で勝負を挑む「売り上げ214分の1」の企業

 そんなイオンのお膝元で、果敢に勝負を挑んでいる小さなローカルスーパーがある。1947年創業の「スーパーサンシ」だ。四日市市内に13店舗を構え、売上の402億円はイオングループの214分の1にすぎない。従業員数はイオングループの58万人に対して、2400人ほどしかなく、言葉は悪いが、象とアリ以上の差がこの2つの企業にある。

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「規模で勝てる相手ではなかったんです。だからこそ、生き残るために必死にやるしかなかったんです」

 そう話すのは高倉照和常務取締役。イオンを相手に勝負をかけたのが、商品を自宅まで届ける「ネットスーパー」だ。

スーパーサンシ(日永カヨー店) ©竹内謙礼

スマホからのアプローチができないスーパーは駐車場がないお店と同じ

 今でこそ「ネットスーパー」という言葉をよく耳にするが、スーパーサンシは40年前にイオンへの対抗策として宅配サービスをスタートしている。電話対応から始まった宅配サービスは早い段階から仕組み化され、90年代後半にはネットによる受注を開始。売上の伸びに加速がかかったのは10年前。スマホの普及によって一気に利用者が激増した。

「今まではロードサイドに大きい駐車場を作ればスーパーの売上は伸びました。でも、今、お客様に普及しているのは車ではなくスマホです。スマホからのアプローチができないスーパーは、駐車場がないお店と同じなんです」(高倉照和常務取締役)