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「5000円以上で配送費を無料にするネットスーパーもありますが、そうすると余分な商品を購入してしまい、注文する頻度が落ちてしまうんです。それが配送効率の低下につながり、ネットスーパーの赤字の要因になってしまうのです」(高倉照和常務取締役)

 もうひとつのポイントは、自社配送を行っている点だ。一般的なスーパーの利益率は25%前後と他業種と比べて低く、この利益を配送業者と折半してしまうと儲けはほとんど残らない。

 そのことにいち早く気付いたスーパーサンシは、自前で物流の仕組みを構築した。日永カヨー店では35台の保冷庫付きの軽トラックが配備され、多いときに1日1600件の配達を行っている。ドライバーの採用から手配まですべて自社で行っており、外注の配送会社は一切利用しないことで利益を確保している。極めつけは宅配ボックスの設置だ。スーパーサンシの会員になると、鍵付きの専用宅配ボックスを無料で設置してくれる。これにより、再配達することがなくなり、時間と人手のロスを最小限に抑えることができるのである。

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スーパーサンシの配送トラック。物流も自前だ(スーパーサンシ提供)
宅配ボックス(スーパーサンシ提供)

 3つ目のポイントは、ネット回りの開発や制作を自社ですべて行っている点である。今まで多くのスーパーを見てきたが、どこの会社もネットのノウハウや情報に疎く、システム開発やホームページの制作は外注しているケースがほとんどだった。

 しかし、スーパーサンシではアプリの開発から受注管理システム、スマホページや動画の制作など、すべて社内のスタッフで行っている。40人のデザイナーとデータアップの人員、20人のシステムエンジニアが常時スタンバイしており、内製化することでネットスーパーのスピード化とコスト削減の両方を実現した。

システムエンジニアやデザイナーが仕事をする自社オフィス(スーパーサンシ提供)

「配送もシステムも全て外部に委託していたらネットスーパーの利益はでません。もちろん、これらを全て自社で賄うのは大変ですが、やってできないレベルではない。多くのスーパーが本業の片手間でネットスーパーをやろうとするから失敗するんです。売り方も仕組みも本業と全て違います。別のビジネスをやるぐらいの覚悟がなければ、ネットスーパーは成功しないんです」(高倉照和常務取締役)

「競合にお客様を取られないため」にやるものだったネットスーパー

 これらのポイントは、長らく多くのネットスーパーに立ちはだかってきた障壁だった。