そもそもスーパーは薄利多売のビジネスモデルがゆえに営業利益は低く、そこにシステム開発、ピッキング、デリバリーの3大経費がかかると、さらに利益が出にくい構造になってしまう。
また、IT化が遅れているアナログな業界ということもあり、システム開発は外注している企業が多く、ピッキングとデリバリーの仕組みを自社で賄えたとしても、ネット回りだけはどうしても外注の企業に頼らざるを得なくなってしまう。注文数が増えれば、当然、システム開発費もかかるようになり、結果、売れば売るほど赤字になるという構造から抜け出せなくなってしまうのである。
私自身も某大手スーパーのネット宅配事業を視察したことがあるが、オペレーションからピッキングまで全てにおいて利益が出せる体制ではなかった。担当者に「利益は出るんですか?」と尋ねたところ、「利益を出すためにやっているのではなく、競合のスーパーにお客様を取られないためにやっているんです」と裏事情を教えてくれた。
利益率を上げるために値上げをすれば競合のスーパーに顧客が奪われ、経費を削減しようとしても、システム開発の部分は削減できず、「他社がやっているから、赤字でもやるしかない」というチキンレース状態に陥ってしまうのである。
あのイオンでさえ、ネットスーパーは順風満帆というわけではなさそうだ。2019年11月の日本経済新聞の記事によると、イオンはグループ全体の売上高8兆5000億円に対して、ネット比率はわずか1%しかない。ネットスーパー事業は2008年から取り組んでいるが、10年以上経っても売上高は数百億円規模にとどまり、営業赤字が続いているという。その後、コロナ禍によって2020年の3月~5月のネットスーパーの売上高は前年同期と比べて約2割増えたというが、それでも、売上規模から考えれば、勢いに欠く数字といえる。
イオンの進出によって経営が立ちゆかなくなってしまった地方のスーパーはたくさんある。その中でイオンと戦い続けているスーパーサンシは、生き残るための覚悟と必死さが、他のスーパーと大きく違うのかもしれない。
“お膝元”から飛び出し次のステップへ
スーパーサンシは次のステップとして“お膝元”から飛び出してイオンに勝負を挑む。
40年間構築してきたネットスーパーのノウハウと仕組みを、2019年から『JAPAN NetMarket』(ジャパンネットマーケット)というブランドで、全国のスーパーにフランチャイザーとして提供し始めた。受注管理システムの提供からピッキング、配送の仕組みなどをすべてコンサルティングし、そのエリアの特性にあったネットスーパーの構築を支援する。