雅子さまの「ご回復」を示すベージュのローブ・モンタント
先述の1999年のベルギーご訪問では、フィリップ皇太子(当時)の結婚式に参列され、雅子さまは羽があしらわれた帽子、靴、バッグまでロイヤルブルーで統一したコーディネートをなさっていて、光沢感があるサテン風の襟元やインナーが結婚式にふさわしい華やぎを演出していた。
近年では、2015年にトンガ国王の戴冠式に出席されたときのベージュのローブ・モンタントは印象深い。レースがふんだんに使われたゴージャスなドレスで、この時初めて拝見した。つまり、前もってお召し物の準備ができるタイミングでご出席を決断されたということだろう。雅子さまの「ご回復」を示すドレスでもあった。戴冠式ご参列の写真は、特別展「令和の御代を迎えて」の図録にも収録されている。
いま振り返ると、雅子さまのお召し物はその時々の心の内を推し量る「バロメーター」になっていたように思える。90年代とは対照的に、ご体調が優れなかった時期はダークトーンのスーツをよくお召しだった。陛下の即位後、イエローやブルー、コーラルなど、ビビッドな色使いのドレスを着こなされる雅子さまのお姿を拝見できるようになった。しばしばジャケットに取り入れられている「チャイナボタン」(組紐)も「雅子さま流」の一つになっていくかもしれないと思っている。
雅子さまは、昨年の「お誕生日に際してのご感想」で、「新型コロナウイルス感染症により、世界中で、そして日本国内でも多くの方が亡くなっていることに対し、この場をお借りしてお悔やみ申し上げます。世界の各地で、あるいは日本国内で、多くの方がこの感染症に苦しみ、懸命の治療にもかかわらず亡くなっていく現実は、本当につらいものです」と率直な思いを綴られ、心を寄せられた。コロナ禍にこそ、雅子さまにとっての「国際的な取組」というものが、今後少しずつ形になっていくのかもしれない。