その実力とルックスでイ・ダヨン、ジェヨンの双子の女子バレーボール選手は韓国バレー界のスターだった。しかし、10年前の校内暴力が発覚。一夜にしてスターの座から転落した。だが、これは始まりに過ぎなかった。
告発の波はスポーツ界、芸能界をあっという間に呑み込んで、元国家代表のプロサッカー選手には小学校時代の後輩の男性への性的暴行疑惑が浮上。元ハンドボール選手だった現職与党議員にも監督時代の暴力行為が取り沙汰されるなど、前代未聞の事態に発展している。
「(合宿所で消灯後何かをやれといわれて)疲れて何度もやんわりと断っているとナイフを取り出して脅迫された」、「汚い、ニオイがすると横に来るなと言われた」、「何かにつけて金銭をとられてお腹をつねられ口を叩かれ、集合させられてこぶしで頭を叩かれた」……。
「天狗になっていて、周りが見えなくなっていたのでしょう」
発端は2月10日。ネットの掲示板に掲載された告発文だった。「現職バレー選手の学暴(校内暴力)被害者たちです」というタイトルの告発文には21個に及ぶ校内暴力やイジメの詳細が書かれており、身元が分かるのを怖れて4人の被害者で書いたと記されていた。
現職バレー選手がイ・ダヨン、ジェヨン選手と分かると大きな衝撃が走った。ふたりは韓国チームの東京オリンピック出場にも大きく貢献したといわれ、韓国女子バレーボール人気を牽引し、芸能番組や雑誌のグラビアに引っ張りだこの超人気スターだったからだ。
バレーボール選手で国家代表だった母親とやはりハンマー投げ選手で国家代表だった父親というスポーツエリート一家に生まれ、幼い頃からバレーボール界で名を馳せた。両親は現在もバレー、陸上で指導者として活動していて、中学時代の父母からは母親が試合に介入したという告発も飛び出した。
イ姉妹は告発の内容を全面的に認めて、すぐに直筆で書いた謝罪文をSNSに投稿したが、これがまた世論の怒りを買った。被害者は「空しい。これで10年の歳月が忘れられると許されるものではない」と書き込んでいる。「SNSだけで謝罪したのは軽率だった」と全国紙体育部記者は指摘する。
「直筆ではありましたが、どこかで見たような決まり文句を羅列した内容で、誰が見ても反省している感じは受けないものでした。謝罪するならば直接連絡して会おうという努力をしなければ……SNSにただ掲載したのは軽率でした。
これで幕引きを図れると思ったのかは分かりませんが、今の韓国では暴力やイジメに対する視線はとても厳しいものになっている。イ・ジェヨンとダヨンの場合は、母親がバレーボール界にいるというバックグラウンドだけでも世の中の視線はさらに厳しくなります。天狗になっていて、周りが見えなくなっていたのでしょう」