告発する流れは芸能界にも
そんな非難が飛ぶ中書き込まれたのが前述の投稿だった。
投稿を見た被害者らは「10年前の過ぎたことだと忘れて生きようとも思っていたけれど、加害者が自分が犯したことを考えもせずSNSにあげた投稿を見て、あの時の記憶がよぎり、自分たちを振り返ってもらいたいという気持ちから勇気を出してこうして書いています」と告発に至った気持ちを綴っていた。
先の11年前にコーチに殴られた男子バレーボール選手は、そのコーチと今でもすれ違うだけでも怒りがこみ上げてきて気持ちがざわつくとメディアに告白している。
校内暴力を告発された男子バレーボール選手の中には一部事実を認めて引退を表明する者も出てきた。しかし、選手が引退間近い30代半ばという年齢だったため、「卑怯だ」という声も上がる。
そして、ついには元国家代表のプロサッカー選手には小学生時代の性的暴行疑惑が飛び出した。被害者はサッカーチームの後輩の男性だという。選手側は事実無根とし、法的対応をするとしているが、被害者側もすでに弁護士を立てている。
前出の記者は校内暴力の範囲が難しいとこう話す。
「過去の話は証拠がないぶん、記憶に頼ることになりますから、複数人で声をあげているケースが多いです。単独での告発、しかも分別もつかない小学校時代となると、判断はかなり難しいのではないでしょうか」
告発の波はさらに芸能界にも及んでおり、若手アイドルやスターに連日、過去の校内暴力やイジメ疑惑が続々と浮上している。当事者のほとんどが否定しているが、収拾する気配はみられない。
ようやく被害者がネットに声を上げられる雰囲気に
韓国での一連の流れを見ていると、若い頃間違いを犯してしまった選手などが非を認めて謝罪した場合には、もう一度チャンスをあげてもいいのではないかと思ったりもするのだが、スポーツ業界に詳しい別の記者はこんなことを言っていた。
「人は変われますから、非を認めてきちんと謝罪をした後ならば機会は残すべきだとも思います。ただ、スポーツ界ではもうずいぶん昔から上の者からの体罰や選手間のイジメが深刻です。問題が明るみに出ても、スポーツ界内部で解決しようとすると、関係者同士がつながっているので容易ではない。
今の20~30代は公平性や透明性に敏感で、社会の雰囲気も変わってきて、最近になってようやく被害者がネットに声を上げられる雰囲気になって表にでてきた。こうやってひとつひとつ解決していけば環境は変わるのではないでしょうか。烈しい暴力が問題視されていた軍隊でも今はそういった事件は相当減ったと言われていますから、スポーツ界も変われないことはない」
この大騒動に、政府は「学校運動部暴力根絶およびスポーツ人権保護体系改善法案」を審議し即議決。これにより、プロ・実業団は選手を選抜する際には高校の生活記録が必要となり、プロの場合には校内暴力はなかったという誓約書を書かせるという。
韓国では、数年前にスポーツに携わる者の人権を保護する目的で大韓体育会傘下に現在の「スポーツ人権センター」ができ、昨夏にはそれらを包括できる「スポーツ倫理センター」が発足した。今回の告発を受け、一般の学校でも人権監視官を設置。4月までを集中申告期間とし、相談を受け付けるという。