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2017/10/04

血塗られた革命の「神曲(かみきょく)」をかわいくする

 ちなみに『歌唱祖国』はもともと、日中戦争や国共内戦の記憶も鮮明な毛沢東時代に作られた楽曲だ。ゆえに1964年に整えられた標準版の2番以降の歌詞は、現代的な目で見ると結構ヤバい。例えば以下のような感じだ。

・我們愛和平、我們愛家郷、誰敢侵犯我們就叫他死亡!
(われらは平和を愛する。我らは故郷を愛する。敢えてわれらを侵略する者は誰であろうと死亡させる!)

・東方太陽、正在升起、人民共和国正在成長
(東方の太陽は昇りつつある。人民共和国は成長しつつある)

・我們領袖毛沢東、指引著前進的方向。
(われらの指導者毛沢東は前進の方向を指し示す)

 思わず「平和を愛するのに敵は死亡させてええんか?」と言いたくなるが、とにかく『歌唱祖国』はそういう曲であり、これまで全中国人民の間で脈々と歌い継がれ、いたいけな幼稚園児から山奥の少数民族にいたるまで歌詞とメロディが頭に刻み込まれてきたのである。

※1964年に北京人民大会堂で公演された革命オペラ『東方紅』中で歌われた『歌唱祖国』。その後、このオペラ版の歌詞が同曲のスタンダードとなった。筆者所有のVCDより。

 もっとも2008年の北京五輪の際に、平和の祭典でこの歌詞はさすがにマズいということか「親愛なる故郷」を「かわいい故郷」と言い換え、「英雄的人民は立ち上がった!」という部分に「われらは平和を愛する」を持ってきて、ヤバい後半の歌詞もばっさり切り捨てたマイルドなヴァージョンが作られた。MVを見る限り、今回SNH48が歌ったのもこちらの新歌詞のほうだ。以下に日本語訳だけ載せておこう。

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五星紅旗が風を受けてはためいている。勝利の歌声はかくも大きい。
われらが親愛なる祖国を歌い上げよう。これより繁栄と富強に向かうのだ。

高山を越え、平原を越え、ほとばしる黄河と長江をまたぎ越えよう。
広大にして美しき土地は、われらがかわいい故郷である。
われらは平和を愛する。われらは故郷を愛する。
われらの団結と友愛の強さは鋼のごとし。

五星紅旗が風を受けてはためいている。勝利の歌声はかくも大きい。
われらが親愛なる祖国を歌い上げよう。これより繁栄と富強に向かうのだ。
われらが親愛なる祖国を歌い上げよう。これより繁栄と富強に向かうのだ!

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 マイルド版とはいえ、充分に愛国的ではある。ちなみにSNH48の『歌唱祖国』カバーは国営通信社・新華社も報じており、完全に中国当局のお墨付きであると考えてよい。