1ページ目から読む
4/5ページ目

非効率だからこそ、熱量が高い。辞められないプロレスの魅力って?

――東京でDDTのスタッフとして働いていた頃と、新潟に戻られた後にレスラーとして復帰してからと、プロレスへのスタンスは変わりましたか?

ササダンゴ 今はプレイヤーだけに専念できるから、試合が楽しいですね。DDTで働いていた頃は、24時間365日、何をやってもずっとプロレスの仕事をしているみたいで。まあ、東京にいた時はそういう感じだったんです。

 でも、新潟に帰って工場の現場に出ると、逆に残業しすぎると労働基準監督署から怒られるんですよ。戻る前は「思っているよりも厳しい世界だぞ」と言われていたけど、時間的な面だけで見ると「なんだこれ。こんなに休まされるのか!」って。むしろ「今までの東京での労働はなんだったんだ」って思いましたよ(笑)。

ADVERTISEMENT

©️文藝春秋

――覚悟して帰ったのに、一種のカルチャーショックですよね。

ササダンゴ 製造業で生産性を上げるためには、労働時間を短くするのが前提だったりするわけです。決められた時間の中で、どうやって効率よく売上げを上げるか、みたいな話ですけど、プロレスは逆に生産性を下げれば下げるほど、熱狂に繋がったりするんです。

――確かにそういう一面がありますよね。

ササダンゴ 祭りでも例えば、1トン、2トンあるお神輿が商店街を移動するだけで、あれだけの熱狂が生まれるじゃないですか。経営者としては言ってはいけないことだけど、ああいうのは生産性が低いからこそ熱狂できるんだと思っています。プロレスの若手レスラーって、理不尽に、非効率に延々とスクワットさせられたりしますよね。でも、ファンはそういう姿を知っているからこそ、心から応援できる。非効率な姿を見ているからこそ、熱くなれるというか。

©️文藝春秋

――そういう感覚は経験してみないと実感できないですよね。

ササダンゴ 今の若い人たちはわからないけれど、少なくとも僕らの時代の人間はそれを知っているから、どこかでそれを求めちゃうんですね。

――そこがプロレスの独特な魅力なのかもしれません。

ササダンゴ 会社でPDCAとか、生産性の話とか、学べば学ぶほど逆にプロレスってよくできているなって思いますよ。だからこそ、プロレスってエンターテイメントのジャンル中では最先端なんじゃないかという自負はあります。演劇よりも、お笑いよりも、格闘技よりも――一歩先を行っている部分もあるぞっていう。