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「生産性を下げるからこそ、プロレスは面白い」 経営者との“二刀流”レスラーがプレゼンするプロレスの魅力

スーパー・ササダンゴ・マシン インタビュー#2

2021/03/05
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パワポのプレゼンを試合前にやるメリット&デメリット

――たしかにプロレスにも通じる要素かもしれません。ただ、普通だったら机上の話ですよね。そんなパワポのプレゼンを、どうして試合会場でもやることにしたのですか?

ササダンゴ プロレスに復帰してからしばらく経った時に、どういうわけかタイトルマッチに挑戦することになったんです。プロレスのタイトルマッチといえば、短くても20分、長ければ30分はやるわけです。僕は一度プロレスを引退した身だし、工場経営との二足の草鞋。年齢のこともあって体力も落ちていた。そんな時間、体力が続くわけないだろうと(笑)。

 そこで色々考えたんですけど、もう自分の作戦自体を、工場経営で学んだパワポでプレゼンテーションする技術でお客さんに見せてしまって、それで時間をつぶせないか――そんな風に閃いたんです。

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©️文藝春秋

――追い込まれた末の、苦肉の策だったのですね。

ササダンゴ 相手レスラーの強みや弱みをSWOT分析(※外部環境と内部環境を分析する経営戦略用語)して、相手の弱点を導き出し、新しい必殺技を開発して、それを練習して効果も検証する。そのうえで「この技を決めれば相手に勝てるんだ!」みたいな論理立てたプレゼンテーションをやってみたんです。…まぁ問題は相手も見ているということだったんですけど(笑)。

――全部見られている(笑)。ちなみに作戦は成功したのですか?

ササダンゴ 結果的にね、負けたんです。作戦が全部バレていますから。逆に相手にその技をやられて負けました(笑)。でも、それをやることによって、お客さんに対してもある程度、試合の見どころを絞れるということは分かったんです。

――ファンに対して見どころを先に提示しているわけですね。

ササダンゴ いろんな勝ち方がありますけど、フィニッシュまでにレスリングの技術を見せなければいけないものを、代わりにプレゼンで見せられるので、試合の序盤部分を大幅に省略できるんですよ。いきなり必殺技のシーンからスタートできるんです。決めの必殺技が決まるか、決まらないかのところからできるので、いろんな部分を端折れる。だから、スタミナ不足とか練習不足の問題が解消できるんです。

新根室プロレスのアンドレザ・ジャイアントパンダとの一戦 ©️getty

――最初はプロレスでパワポのプレゼンというのは場違いに思われたと思います。実際の現場では盛り上がりましたか?

ササダンゴ 会場に来たお客さんがすごく盛り上がってくれて、その動画がSNSを通じてものすごく評判になったんです。いまでは大学や専門学校でプレゼンの教材としてその動画を見てくれているという話も聞きました。それはすごく光栄ですね。