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「生産性を下げるからこそ、プロレスは面白い」 経営者との“二刀流”レスラーがプレゼンするプロレスの魅力

スーパー・ササダンゴ・マシン インタビュー#2

2021/03/05
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魅力を伝えるには? 引退して学んだパワポとプレゼン

――その後、2010年にはご実家の工場を継ぐために一度プロレス界からは引退されていますよね。工場経営者としては、どのように学んでいかれたんですか?

ササダンゴ まず、職人になるには到底、今からじゃ間に合わないと思いました。だから、せめて40人の工場をあと30年は続けられるくらいの最低限の経営をできるための知識を身につけようと思って、2年間新潟大学の夜間大学院に行かせてもらったんです。

©️文藝春秋

――大学院ではどのような勉強をしていたのですか。

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ササダンゴ 仕事の後に夕方から大学に行って、21時くらいまで講義を受けていました。先生の授業も生徒の発表も、パワーポイントを使ってみんながプレゼンするんですよ。あるお菓子メーカーの人が「わが社の商品は…」みたいな感じで。そこで基本的なプレゼンの技術を身につけました。

――エンターテイメントのプロレスと、ものを作る製造業とでは分野が違いますが、特にどの部分に大きな違いを感じました?

ササダンゴ ものづくりは、材料・加工費がこれくらいで、作業に何時間かかるからいくら…みたいに見積もりを出して、それが通れば受注が取れる。「原価が出せるって素晴らしい!」と感じました。でもプロレスって1万円と5000円のチケットがあるけど、「見積もり出せ」って言われても出せない。よくそれでお客さんはお金払ってくれていたなと感じましたね(笑)。

――確かに、実体のあるものとは違いますからね。

ササダンゴ 実業と虚業の違いをまざまざと見せつけられました。プロレスはある種のノウハウがあって成立させている、すごい仕事だったんだなって思いました。

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――大学院で学んだパワポとプロレスは、どのように結びついたのですか。

ササダンゴ プロレスを1回引退して、製造業の現場に入って思ったのは日本の「改善」のすばらしさ。品質マネージメントの基礎中の基礎がPDCA(※Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し行うことで、継続的な業務の改善を促す品質管理の基本手法)だったんです。これはプロレスにも応用できると確信しました。

――そのPDCAがプロレスの試合にも生かされるのですね。

ササダンゴ 試合の作戦を立てるというのが「計画」ですよね。マッチメイクされて、相手をみて「こういう試合をしよう」と計画して、実際に戦ってみる。これが「実行」。そして、お客さんの反応をSNSを使ってチェック、つまり「評価」する。そうすると、次は「こういう作戦で行こう」という「改善」に繋がるわけです。