10年前、東日本大震災のときのこと。茨城県水戸市内にある水戸芸術館は、建物損傷などの被害を受けた。震災後しばらくは避難所として活用されたこともあり、本来の活動へ戻るにはしばらくの期間が必要だった。
相応の月日が流れたいま。あの出来事とその後の体験を改めてどう受け止め、いかに語り継ぐかが課題として浮上している。その点でアートにできることは多いはず。そう考えた同館では現在、現代美術ギャラリーにて「3.11とアーティスト:10年目の想像」を開催中だ。
すべては人間がしたことである
展覧会はグループ展のかたちをとる。各室ごとにさまざまなアーティストが、震災に応答した作品を掲げている。
絵画表現を手がける加茂昂は、原発事故後の福島に現れた立入禁止区域の境界線に着目。原発建屋などの「現場」にアクセスすることはいまだ難しく、日常的に事故の影響が視覚的に感じられるのは、立入禁止区域を区切るフェンスや出入りのゲート、立て看板くらいしかない。
そこで加茂は、それら「区切るモノ」を描き込んだ絵画を制作するようになった。ただし画面の大半は、青々と茂る草木など自然の事物が占める。それが実際の光景なのだから、絵もそうなる。