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 ICJはドイツの主権免除を認めドイツが勝った。しかし、判決文には、ドイツのイタリア人捕虜に対する不法行為を認めたうえ、それを糾弾するICJの立場が何か所も明記されている。フェリーニ判決は、賠償について「2国間交渉の主題となるだろう」と両国の継続協議をアドバイスしている。

 国際関係論が専門で「フェリーニ判決」に詳しい福井県立大の島田洋一教授がこう指摘している。

「一大歴史戦を覚悟した準備が必要」

「ICJで闘えば、確かに判決の主文は主権免除に反した韓国側敗訴となるだろう。日本側の弁論書はそのまま判決文の一部に載せられて公開資料になる。しかし、それだけではすまない」

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 ICJの判断はあくまで「主権免除」についてであり、賠償請求問題は2国間に残るというわけだ。

「ICJの裁判官の大半は、東京裁判史観やクマラスワミ史観の持ち主だ。日本が慰安婦制に関して、ファクトに踏み込んだ相当に精緻な議論をしないと、主文以外では日本非難の文言が並び、日韓に改めて交渉を求めるアドバイスが付け加えられることになるだろう。日韓請求権協定で解決済みといった形式論で乗り切れるなどと思ったら、大きく国益を損なうことになる。国際社会で闘うためには、一大歴史戦を覚悟した準備が必要だ」(島田教授)

久保田るり子氏(産経新聞編集局編集委員)

 韓国は提訴された裁判の受け入れを義務づける「強制管轄権」を受託していないため、日本が提訴しても韓国が応じなければ訴訟は成立しない。

 また、ICJには現在、日本人裁判官の東京大学名誉教授、岩沢雄司氏(66)がいるため、訴訟を起こす場合は、公平を期すため訴訟国の国籍を持つ者が裁判官として参加する。

 韓国から強者(つわもの)の裁判官が参加することになる。

日本政府の責任は重大だ

 日本の慰安婦問題に対する国際世論は、逆風の嵐であることを今一度、肝に銘じる必要がある。

 国連のクマラスワミ報告書以来、国際人道主義の世界では「慰安婦イコール性奴隷」がまかり通っている。「歴史的事実は公娼制である」と言っても、それを世界に発信してこなかった日本政府の責任は重大なのだ。

 韓国が拡散してきた慰安婦の捏造の歴史を全否定するには、有無を言わせない歴史的事実を堂々と主張する必要がある。日本政府は証拠を揃えてICJに付託する準備を始めるべきときだ。

出典:「文藝春秋」3月号

 詳しくは月刊「文藝春秋」(3月号)および「文藝春秋 電子版」掲載の久保田るり子氏のレポート「『慰安婦判決』韓国の破滅」をお読みください。

文藝春秋

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「慰安婦判決」韓国の破滅