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支持率が落ちている政権が強引に進める、改革の内容は

「韓国の検察は捜査指揮権、そして起訴権を独占し、他国にも例を見ないほどの莫大な力を持っています。この力を牽制するために新たな機関を設けることに世論も概ね賛成していますが、議論をとことん尽くしてから導入すべき事案なことは明らか。

 文大統領の支持率も落ちてきているため、与党は180議席という力を持っているうちに、と焦って強引に推し進めようとしていますが、あまりにも拙速だと批判する声が出ていました」  

文大統領 ©️AFLO

「重大犯罪捜査庁」は腐敗、経済、公職者、選挙、防衛事業、大型惨事などの6大犯罪を専門に捜査する組織だ。この部署が誕生すれば、検察庁からはすべての捜査権が剥奪され、起訴権と公訴維持権だけが残ることになる。尹前検事総長は、「検察からの捜査権完全剥奪は腐敗をはびこらせる温床となり憲法精神に大きく違背する」と猛批判していた。 

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 現政権と尹前検事総長の軋轢は2019年8月、尹前検事総長が曺国元法相一家への捜査を進めてから始まった。文大統領の最側近だった曺元法相が法相候補となったが “身体検査”の過程でほどなく夫人が娘を大学に不正入学させた疑惑や不正投資疑惑などが次々と噴きだした。

 検察はすぐに捜査に着手し、人事聴聞会が始まった同年9月6日、曺元法相夫人は検察により起訴された。昨年12月には私文書偽造などの罪状で懲役4年、追徴金5億ウォン(約4800万円)の一審判決がでて、量刑が重すぎると進歩層からは非難の声がでていた。 

 別の中道系紙記者が言う。 

「進歩層は、自分たちの仲間だと思っていた尹前検事総長が曺元法相の捜査の手を緩めなかったのは検察改革への報復だとみなした。ここから、尹前検事総長の追い出しが始まったのです」 

相とのバトルの軍配は、前検事総長に上がったが……

 曺元法相は就任してから40日たらずで辞任に追い込まれた。次に法相となった秋美愛前法相は就任当初から法相寄りの人事を強行し、尹前検事総長とのバトルを開始した。昨年11月には、秋前法相が尹前検事総長の職務停止を求めるなどの強行策にでて、ニュースは秋VS尹一色となった。尹前検事総長は行政裁判所に職務停止などの不当性を訴え、裁判所はそれを認容。軍配は尹前検事総長に上がった。

秋法相 ©共同通信社

 しかし、その間、180議席という圧倒的な力を持つ与党は昨年12月、検察改革の第1弾「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)の導入に関する法改正を強行採決。年明け1月21日、公捜処が発足している。

 この組織は、大統領や国会議員、最高裁判所長などの高位公職者の犯罪を専門に捜査する組織で、その捜査対象には検事総長も含まれる。実業家である尹前検事総長の妻に収賄疑惑が浮上しており、アキレス腱となる可能性もあるともいわれ、 第一号の捜査対象者は尹前検事総長ではないかという噂がまことしやかに流れている。  

 尹前検事総長はもともと文大統領が惚れ込んで大抜擢した人物だ。