韓国の最高峰、ソウル大学法学部卒。9浪の末、司法試験に合格し、1991年、検事の道に入った。時の政権にすり寄るといわれる検察で政権に関係なく捜査に邁進することで名を馳せた。故金大中、故盧武鉉元大統領時代にも側近らを不正容疑で捜査し起訴。
2013年、朴槿恵前大統領時代には、国家情報院によるネットの不正書き込みの捜査チームのチーム長となり、当時の元世勲国家情報院長を公職選挙法違反で拘束令状を申請するも、法務省の反対に遭い捜査は頓挫した。その年の国政監査では上司の指示は違法だったと公言し、「組織に愛情はあるが、人には忠誠しない」と言い放ち一躍時の人になった。
この後、地方に飛ばされたが朴前大統領の崔順実スキャンダルが弾けた2016年に特捜部に復帰。当時の青瓦代秘書官や李在鎔サムスン副会長、そして文大統領の宿敵、李明博元大統領をも起訴に持ち込み、「積弊清算の象徴」と持て囃された。
そして、文政権発足後の2017年5月には、異例のごぼう抜きでソウル中央地方検事長に任命され、2019年7月には検事総長に大抜擢された。しかし、この時すでに検察内部では、捜査機関が進むべき方向性などへ断固とした信念を持っている尹前検事総長の抜擢は、検察改革を進める現政権とは合わない人事だと囁かれてもいたという。
過去にはユニクロ姿を「新日」と揶揄されたことも
与党が尹前検事総長を引きずり下ろそうとすればするほど尹前検事総長の人気はうなぎ登り。昨年末には、世論調査の次期大統領候補者として望む人物で1位になっており、政権からは牽制されていた。
2012年53歳の時に実業家と結婚。保護犬、保護猫を里親として迎え入れていることでも知られる。自宅近所を犬と散歩している姿がカメラにとらえられて好意的に報じられたが、その時着ていたのがユニクロのダウンジャケットだったことが判明すると、進歩層からは、「親日」と揶揄された。親日かどうかは定かではないが、日本に友好的だという噂もある。
尹前検事総長の辞任の威力はすぐに現れた。政府は6日、「重大犯罪捜査庁」の発議をひと月ほど延期することを示唆している。
尹前検事総長の辞任が持つ反文在寅の潜在的な破壊力に、与党は戦々恐々としている。
尹前検事総長がどの政党から出馬するのかに注目が集まるが、前出記者はこう語る。
「これまでも政治経験のない人が党に属さず、いわゆる “場外”から出馬して成功したケースは一度もない。野党のどこかに合流するとみられますが、どのタイミングでどこにするのかに関心が集まっている」。
次期大統領候補として出馬し当選となれば日本にも大きな変数となる。