まさかの電撃辞任だった。
次期大統領選挙を1年後に控えた3月4日、現政権と衝突と摩擦を繰り返してきた尹錫悦検事総長が辞意を表明し、文在寅大統領は即刻受理。韓国政界に激震が走っている。秋美愛前法相との烈しいバトルでは法に訴えて結果を出してきたが、与党180議席という強大な力を前に「私が検察でやれることはここまで」と言い残し、検察を去った。
翌朝の新聞にはさっそく「政権を批判し政治参加の第一歩へ」(朝鮮日報、3月5日)、「大選(大統領選挙)を1年後に控え、尹錫悦が出師の表を投げた」(中央日報、同)、「辞任した尹錫悦、事実上政治宣言」(ハンギョレ新聞、同)、「尹錫悦ついに辞任、大選揺さぶる」(ソウル新聞、同)などの見出しが飛びかい、早くも大統領選挙出馬への関心が高まっている。
「民主主義の退歩」と文政権を連日批判
「今や尹前検事総長は反文在寅勢力の中心的存在。『どんな地位にいても自由民主主義を守り国民を保護するために最善を尽くす』と政治家が使うような言葉を用いていることから考えると、大統領選挙(大選)に挑戦するだろうと見られています。
韓国の大選は1年前から大きな動きがでてきますが、今回その爆弾は尹前検事総長。辞任によって反文勢力が盛り上がっている。与党候補有力といわれていた次期大統領選挙の構図も揺さぶることになり、が然面白くなってきました」(中道系紙記者)
3月に入ってから、尹前検事総長は「民主主義の退歩であり、この国を支えてきた憲法の精神の破壊、法治を抹殺する行為」、「単純に検察組織ではなく70年あまりの刑事司法システムを破壊する拙速立法」、「その被害は国民へ返る」と連日烈しく政権批判を繰り返していた。
これに対し、ある与党議員は尹前検事総長を「蟷螂(とうろう)の斧」に例えて、「かまきり(尹前検事総長)が馬車(国会)の前に立ちはだかっても馬車が立ち往生するわけではない」と皮肉っており、圧倒的多数の傲慢さが現れていると保守系紙を中心に報じられていた。
尹前検事総長が猛反対したのは、政府が進める「重大犯罪捜査庁」の設置だった。検察改革第2弾といわれるこの組織は2月9日に提議されたが、「なぜこんなに早く?」という声がそこここで漏れていたと前出記者は言う。