「世間の人に興味があろうとなかろうと、老若男女に関らず幅広く知られているということが、暴力団業界では大きな意味を持つ。何十、何百とある業界団体の中では、この知名度・認知度に比例して人気が上がっていくが、人気の裏には業界ならではの現実がある」
関西を拠点とする指定暴力団幹部が、業界における認知と人気の関係について語った。
暴力団組員は全国で24団体、約3万人
24団体。この数字は2020年4月、警察庁組織犯罪対策部が「令和元年における組織犯罪の情勢」で発表した指定暴力団の数である。業界のことを知らない人からすれば、そんなにあったのかと驚く数かもしれない。
主要団体は六代目山口組、神戸山口組、絆會、住吉会、稲川会。中でも六代目山口組は、当時メディアが分裂抗争について次々と報じたこともあり、抜群の知名度を持っている。構成員数は8900人と業界最多であり、勢力範囲は1都1道2府39県とほぼ全国区だ。
神戸山口組は1都1道2府28県で3000人、住吉会は1都1道1府15県で4500人、稲川会は1都1道16県で3400人、絆會は1都1道1府9県で610人。これらを含む全国の暴力団構成員数は令和元年末時点で28200人、六代目山口組はこのうち3割以上を占める。
六代目山口組には執行部を始めとする確固とした上下関係が存在し、住所録の名簿は盃をもらった順に並んでいるという。認知・人気がある組が出ていくと話がすんなり通りやすく、同じ事案でぶつかっても組の上下で出てくる者のランクが違ってくる。
リーダーの資質と資金力が人気に影響するのは政治と同じ
「業界の人気は自民党に例えればわかりやすい。政党の中では首相を出した派閥が力を持つのと同じだ。認知と人気が高い方が人は集まりやすく集めやすい。そこに上に立つ者の実力と評判、組織として金があり人が多いことも条件になる。
問題や騒動が起きた時、上に立つ者が『何でもやってこい、後は俺が落とし前を付けてやる。面倒を見てやるから心配するな』と言えるかどうかが、組の人気を左右する。『今回は辛抱してくれ』と言うばかりの組は人気が出ない」(同前)
トップとしての決断力、実行力、責任の所在の明確さなどをはっきり示すリーダーがいる組が人気を集めるのも政治の世界と同じだろう。
「親分が“何でもやってこい、心配するな”と言っても、金と人がなければその後の補償は続かない。その人のため組のために身体を懸けても自分だけが臭いメシを食って終わる。人気のある組織は金と人の足し算で成り立っている」(同前)
その意味を幹部は端的にこう説明する。