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「怖くなるから…」スマホの地震速報を鳴らない設定にしている福島の中高生たち

被災地の「こども食堂」は10年間でどう変わったのか

2021/03/11
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『正しく怖がる』その“正しさ”は誰が決めるのか

 2020年はコロナ禍の影響で、女子中高生の自殺が増加した。警察庁によると、年間自殺者は2万919人。男性は前年比で135人減少し、1万3943人。しかし、女性は885人増加し、6976人だった。文科省のまとめでは、自殺した小中高生は479人。職業別の統計を取り始めてからは過去最多となった。

 高校生は329人、中学生は136人。中学生は前年比で1.4倍に増えた。

「震災当時はみんなが不安でした。今は日常化して、落ち着いてはいます。しかし、コロナ禍で起きていることは、3.11のときと似ている気がしています。みんな不安なことに対して攻撃的になっている。『正しく怖がる』という言葉がありますが、その“正しさ”は誰が決めるのでしょうか。震災後、不安な母親たちに、“科学的な知識がないから、教えてあげましょう”というスタンスでした。その結果、一番不安な人を排除してきたような気がします。少なくとも、私はそういう雰囲気を感じ取りました。

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 昨年は、学校の休校措置がありましたが、うちはコロナがあっても休んでいません。コロナの感染だけで健康かどうかが決まるわけではありません。特に、虐待やドメスティックバイオレンスがある家庭の場合は、安心して自粛生活ができません。コロナによる自粛生活は、他のリスクを無視しています。感染させるかどうかで、こども食堂をするかどうかを決めているわけではありません。そこだけは曲げたくない。集まって話をする場が大切なのです」

震災10年を語る鴻巣さん

「子どもたちは、生活に余裕がない感じですね」

 今年の3月11日で、震災から10年を迎えるが、どのような変化を感じているのだろうか。

「震災10年を意識している人はそれほどいないと思います。コロナ禍の影響もあるので、それどころじゃない。震災の追悼集会も難しい状況です。人が外部から来ることが減っているので、刺激もありません。震災後3年のときや5年のときは地域でも話題になりましたが、こども食堂やスクールソーシャルワーカー(SSW)でかかわっている子どもたちは、生活に余裕がない感じですね。当時の被災体験の大小に関係なく、10年を振り返る心のゆとりがない気がします」

 鴻巣さんは「たべまな」の運営のほか、SSWもしているため、地域との連携をすることで、さまざまなニーズに答えている。取材を終えると、SOSを出している地域の機関に足早に出向いて行った。

写真=渋井哲也

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