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詐欺師に「中国人女性」を紹介されて

――そんな岩崎さんは、やがて詐欺事件に巻き込まれて立件されてしまいますが、岩崎さんはなぜ詐欺師とつながりがあったんですか?

高木 岩崎さんが離婚した直後の2010年、あるネットの掲示板に「結婚したい。女性を紹介してほしい」みたいな書き込みをした。その書き込みに反応してきたのが、詐欺師の村田容疑者。岩崎さんは、彼から中国人女性を紹介されて結婚することになります。

――2010年ということは、震災前にすでに知り合っていたんですね?

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高木 そうです。もちろん詐欺師だとは知らなかった。短髪でメガネをかけた人のいいおっちゃんぐらいにしか最初は思っていなくて。その後、震災が起こって岩崎さんは賠償係になると、そのことをポロッと言ってしまうんですよね。そうしたら「賠償の請求の仕方を教えてくれ」みたいな感じで相談されるようになった。

 ただ、岩崎さんは、問い合わせのコールセンターが答えるような一般的なことしか教えてない。当然、岩崎さんも「自分が賠償係だから全部教えるわけにはいかない」という気持ちがあった。だから、せいぜい「賠償金は申請から3カ月ぐらいで支払われますよ」とか、「書類はここから取り寄せてください」とか、そのレベルのことを教えていたんです。

福島第一原発(東京電力提供)

芋ずる式に、岩崎さんにも取り調べが…

――その後、村田容疑者は2014年8月、東電から賠償金約1200万円を受け取ったとして詐欺容疑で逮捕され、そこから芋づる式に、岩崎さんが取り調べを受けることになります。

高木 そうですね。2016年2月に、岩崎さんは賠償金の請求方法を教えた見返りに現金を受け取ったとして取り調べを受け、書類送検されたんです。

 岩崎さんは借金苦から詐欺に加担したとされたんですが、離婚した直後で生活が苦しかったとはいえ、買ってもらったのは結婚した中国人女性との生活のための「ウォシュレット」と「シーリングライト」。結婚祝いとして買ってもらっただけなんです。

岩崎さんの供述について報じる新聞(2016年3月18日「朝日新聞」夕刊)

――それは村田容疑者側が計画してわざと買い与えたということなんですか?

高木 まあ、それもあるでしょうね。村田容疑者からすると「金品で懐柔できたらいいな」というような腹積もりはあったかもしれません。

――岩崎さんとしては、詐欺に加担したつもりは毛頭ないわけですから、取り調べでは事実無根だと主張された?

高木 はい。先ほどのシーリングライトの話などを全て正直に話したと。当然うそ発見器にもかけられて、嘘は言ってないと捜査官も認めているんです。それなのに、詐欺容疑で逮捕された別の男が「村田が申請書類の記入方法などを教わった見返りに、東電社員に賠償金の5パーセントを支払った」と裁判で証言した。それだけをファクトに、岩崎さんは「賠償金の請求方法を教えた見返りに現金数百万円を受け取った東電職員」と新聞各紙で報道されてしまった。そして、取り調べを受け、書類送検されます。