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「1日も早く、死刑囚から生還せねばと」林眞須美、加藤智大、木嶋佳苗…凶悪殺人犯が獄中で残した“言葉”

『死刑囚200人 最後の言葉』より #2

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精神鑑定と死刑判決の確定

 死者7名、重軽傷者10名。不可解な動機と、あまりに重い結果は、日本中を震え上がらせた。加藤は真っ先に精神鑑定にかけられたが、責任能力に支障はないと判断され、2008年10月に起訴されている。犯行は計画的で、死者を増やすための立ち回りは極めて理にかなったものだった。

 加藤は初公判を前に被害者へ謝罪の手紙を送り、また公判では「取り返しのつかないことをしてしまった」と謝罪の言葉を口にした。しかし、土浦事件の金川真大のように「死刑になりたい」という目的ではなく「掲示板を荒らされた。事件を起こさなければ居場所がなくなると思った」と、理解しにくい動機の説明に終始した。

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 7名の死者を出した事件ゆえ、死刑判決は当然だった。加藤は公判中から何冊かの手記を出版したが、「死刑を受け入れる」と語る一方で、原稿には一切手を入れないでほしいという注文をつけたという。書かれた内容は意味の通らないものが多かったため、反響もほとんどなかった。

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 再審請求中の加藤はまだ生きているが、加藤の弟は2014年に自殺している。死の1週間前、弟はこんな言葉を残していた。

「あれから6年近くの月日が経ち、自分はやっぱり犯人の弟なんだと思い知りました。加害者の家族というのは、幸せになっちゃいけないんです。それが現実。僕は生きることを諦めようと決めました。死ぬ理由に勝る、生きる理由がないんです。どう考えても浮かばない。何かありますか。あるなら教えてください」

加藤智大の言葉

「また長い1日が始まる。ただただ苦痛なだけ。まだ始まってないけど、終わりでいいや」

週刊誌編集者と3度目の獄中結婚

首都圏連続不審死事件(2008~09年)――木嶋佳苗(土井に改姓)

死刑確定 2017年4月14日

死刑執行 未執行

 2008年から翌年にかけ、インターネットの婚活サイトを利用しながら20人以上の独身男性に結婚を持ちかけ接近。金銭を騙し取る過程で、少なくとも3人を殺害していた事件。2017年に死刑が確定した木嶋佳苗は、獄中で何度も結婚と離婚を繰り返し、近年は事件報道でも知られる『週刊新潮』の編集部員と結婚していたことが報じられ、世間を驚かせた。

 木嶋が殺害したと認定されたのは3人だが、ほかにも木嶋と接点のあった数人の男性が不審死しており、いまなおその死の真相は解明されていない。これだけの疑惑がありながら、世間からは「憎悪」よりも、誘蛾灯のように男を引き寄せ続けるその魔力に関心が集まるという、摩訶不思議な死刑囚である。

 木嶋は1974年、北海道の別海町で生まれた。父は行政書士で、しつけは厳しかったと伝えられる。木嶋は地元の高校を卒業後、上京し東洋大学に進学するが、学費未納ですぐに中退。その後、デートクラブに勤務したり、資産家と愛人契約を結ぶ。28歳のときにはネットオークションの詐欺で逮捕されるなど、当時から「ネットで男を騙す」手口を磨いていた。