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「コロナで認知症の祖母とはもう1年会えていない」“長期化する介護”をイメージで語る人が知らないこと

「コロナで認知症の祖母とはもう1年会えていない」“長期化する介護”をイメージで語る人が知らないこと

コロナ禍の介護、少しでも気持ちを楽にするために“読んでほしい漫画”

source : 文藝春秋 digital

genre : ライフ, ライフスタイル, 芸能, 読書, 医療

note

安藤 寝てる時に急に布団めくって脱がされそうになったら、そりゃびっくりしますよね。そこで「バケモンじゃないです」って言ったところで、じゃあ誰なんだって話じゃないですか。だから、おばあちゃんの言葉を頭ごなしに否定はできないですよね。

ニコ まずは「そうだね」って受け止めることが大切ですよね。祖母とテレビで相撲中継を見ていて、急に「おばあちゃんは相撲をとらなくていいの?」って聞かれたことがあったんですけど、「ばばはもう引退したからいいんだよー」って返事をしたら、祖母も「そうなの」って神妙な顔で納得してくれたんですよね。

 認知症の方へのとっさの対応が上手いという意味で、物書きや芸人さんは介護に向いてるのかもしれないですよね。母親だと「相撲なんてとるわけないでしょ!」って正論で返してしまってバトルになるんですけど、ちゃんと受け止めて返すと、祖母も落ち着いて笑顔で過ごせる時間が増えるんです。

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安藤 お母さんは一番距離が近いから、余裕がなかったんでしょうね。家族の介護は、認知症になる前の姿を知っている分、辛くなってしまうんですよね。

ニコ 安藤さんは施設で介護されていて、距離感は意識されてましたか? しんどくなっちゃうことはありませんでしたか?

安藤 良い距離が保てないとできない仕事だと思っています。でも、しんどくなっちゃった場合はチームワーク頼りです。他のスタッフさんと「こういう風にしていった方がいいかね」って情報交換をよくしていました。今はコロナで情報交換がしづらいので、精神的な面でも介護現場の負担がどんどん大きくなっていると思います。

※写真はイメージ ©iStock.com

欲しがりません勝つまでは……介護は罪悪感との闘い

ニコ 私の場合、メインでやってくれている母親と介護を分担していたので、仕事でマンガを描いている時間が気分転換になっていました。でも母はずっと祖母の介護に向き合っていたことで、楽になることに罪悪感を覚えるようになってしまったんです。

安藤 欲しがりません勝つまでは的な……。

ニコ だからうちの場合、まず私と親戚で母親に「楽になる自分を許していいんだよ。どうにか休んでほしい」ということを伝えました。それでも「お母さん(ニコルソンさんの祖母)が辛い思いをしてるのに、私が外でご飯なんて無理!」って、気分転換に外食に誘ってもなかなか受け入れてくれなくて、そこを懐柔するのが一番大変でしたね。

安藤 ご家族の、やれることは全部自分でやりたいという気持ちもすごく分かります。でも、やっぱり介護する側が楽にならないと介護される側も楽にならないんですよね。限界をこえてしまう前に、私がやっていたような夜間介護を利用してもらうことで、少しでもご家族の心の余裕につながればいいなと思います。

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