コロラド州コロラドスプリングスに「リデンプション・インク」という名の刺青サロンがある。全米から、改心した人種差別主義者や白人至上主義者が、ナチ党のかぎ十字シンボルや黒人蔑視の刺青などを消すために集まる特殊なサロンだ。実際に消すのは困難なため、美しい花や縁起の良い刺青を上彫りする。
1月6日の米議事堂乱入事件直後から、この刺青サロンに予約が殺到している。現在予約待ちがおよそ700人。サロンによると、最近の客は改心のためというよりは、警察の捜査や人の目を恐れてという印象を抱くという。また、かなりの数の客が米軍関係者だという。
メンバー数は3.5万、米国最大の反政府過激団体
議事堂乱入には、いくつもの過激派、白人至上主義団体やヘイト・グループが加担した。その中で最も注目を浴びているのが「オース・キーパーズ(Oath Keepers)」という名の極右集団。現役、もしくは退役した軍人、警察関係者により構成され、襲撃時に組織力と武装力のレベルの高さを見せつけた。メンバー数は自称35000人(2016年)。現在、米国最大の反政府過激団体である。
オース・キーパーズは2009年に、スチュワート・ローズという名の頭脳明晰だが偏った危険思想を持つ男によって創設された。彼は名門イエール大学を出た弁護士で、オース・キーパーズ設立前は、共和党有力議員の秘書をしていた。また、荒くれ者が多いと言われる米軍の落下傘部隊に所属していたこともある退役軍人である。
ローズは「国内、国外からのあらゆる敵から米国憲法を守る」という売り文句で、軍関係者と警察関係者に狙いを定めてリクルートし、自警団体として短期間で急成長させた。各州に支部を作り、それぞれが軍隊レベルの訓練を行い、大量の戦闘用武器を全国に備蓄している。ローズは自身のカリスマ性と高い指導力でメンバーを魅了し、洗脳してゆく。ローズの真の目的は政府転覆だ。メンバーらに、現政府や政治家がいかに腐敗しているか、この世がいかに嘘に溢れ、市民が政府によって欺かれているかを説き、オース・キーパーズこそが、アメリカの価値観と市民を守る最後の砦だと叩き込む。メンバーオンリーのチャットは、陰謀説に満ち溢れている。いつミャンマーのような状態になってもおかしくないような論調だ。
ここ数年、黒人住民と警察の衝突があるたびにどこからともなく現れ、「市民を守る自警団」としてAK-47や突撃銃を持って街を徘徊し、地元住民から気味悪がられていたのもオース・キーパーズだ。