個人情報を“病院にも明かしたくない”著名人
こういった個人情報の問題も医療機関にとってはセンシティブな問題だという。特に著名人が来院した時には、普段以上に面倒なケースが多いそうだ。
「あるスポーツ選手は『なんで住所や連絡先なんて書かないといけないの?』と言ってあからさまに不機嫌になって問診票への記入をしてくれないケースもありました。もちろん有名な方なので、書きたくない気持ちはわかるのですが、病院は普通の商業施設とは違って、自分の身体の治療をする場所です。何かあった際には緊急で連絡が取れないといけない。そのくらい考えればわかりそうな気がするんですけどね…」
これまで挙げてきたケースは、モラルに関するものだが、時には「これ、違法じゃん…」というお願いをしてくるような患者もいるという。
診断書に違法行為を求めた“ヤバい患者”の職業は……
「お子さんが手術をうけることになったので、『保険会社に出す診断書を書いてほしい』とのお話でした。用紙を確認すると最初に診断した日付のところに、上から鉛筆で日付が書いてあるんです。『あれ?』と思って、『こちらは先生に書いて頂くので…』と伝えると『保険に入ったのが初めて病院に来た日より後だから、僕の書いた日付で書いてもらわないと困る』と言ってきて…。もちろん違法行為になりますから、『そういったことはできないんですよ』とやんわりとお断りをすると、『じゃあ先生に直接頼むからいいよ!』と激昂されて」
もっと驚愕したのは、その患者の職業が分かった時だったという。
「保険証から推測するに、警察関係のお仕事をされている方なんですけどね…」
インターネット転売で稼ぐ“貧困ビジネス”も
また、生活保護受給者の来院でも難しい局面があるという。
基本的に生活保護受給者は医療費が全額公費で賄われる。それゆえ、無料で処方された向精神薬や風邪薬をインターネット等で転売する「貧困ビジネス」が社会問題化している。2015年には、生活保護受給者から向精神薬を大量に買い集めて売りさばき、3000万円近い売り上げを挙げていた東京都の女が逮捕されている。
最近では規制も厳しくなっているが、数年前はまだそのあたりがグレーゾーンだったという。
「ウチに来ていた生活保護受給の患者さんは毎月同じ日に来院して、病院で処方できる限界である10日分の風邪薬をキッチリもらっていく。湿布薬も70枚とか一度にもらっていくので、『この量、自分で使う…?』というのはみんなちょっと不審がっていました。他にもベンツに乗って来院される受給者の方もいて、さすがに『どういうことだろう…』とは思いましたね」
もちろん症状がなければ基本的には薬は出さないのだが、医師によっては患者の主張に折れてしまう人もいたのだそうだ。