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コロナ禍に「どうせなら立ち食いそば屋をやってみようか」

 

店主の古瀬博文さんと奥にお母さん

 製麺所としては比較的大きな会社の社員食堂などに麺を卸していたそうだ。しかし、コロナ禍などで売り上げが減少し、どうにかしないといけないという危機感があったという。ちょうどその頃、開店した場所が賃貸物件として出ていて、立地もよく、「どうせなら立ち食いそば屋をやってみようか」という話になったという。

「初めは大口の製麺卸と立ち食い店と両立できると思っていたのですが、それは甘かったようです。やってみるとどうしても無理なことがわかり、退路を断つ決意を込めて、大口の製麺卸をやめて、まるびを中心にそば・うどんを自家製麺する営業体制にした」そうである。

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 自家製麺にするメリットはもちろん、仕入れのコストが下げられることである。日本橋の「よもだそば」も仕入れから自社製麺に切り替えて成功している。

 生麺をほぼ茹で上げの状態で出せるのは製麺所をやっていたメリットだと古瀬店主はいう。

コシのある生麺「春菊天そば」(350円)

 さっそく、「春菊天そば」が登場した。つゆをひとくち。やや甘めのきれいなむらさきのつゆである。出汁は鰹節を中心にしたコクのあるタイプで、万人受けする味だ。そばを食べてみると、コシのある生麺の茹で上げでなかなかよい。春菊天はサクッと揚がっている。お店の経験ははじめてというがかなりレベルが高い。お母さんが天ぷらの調理に加わっているのも大変心強い。

「春菊天そば」(350円)、つゆもきれいでコクもある
別の日に訪問した時の「もりそば」(300円)
別の日に訪問した時のぜんぜんミニじゃない「ミニカレー」(250円)

 食べていると、一人また一人と近所の方が入店していて、すでに常連になっている方もいるようだ。

 矢口渡の宮元通り商店街には、かつて蒸し麺のやきそばが抜群にうまかった製麺所兼立ち食いそば屋の「板倉」という名店があった。そして、駅前にはチェーン店ではない「都そば」もあった。しかし、これらがすべて廃業し、ここ数年は立ち食いそば屋がない空白地帯となっていた。地元民にとって、「まるび」の誕生は「立ち食いそば屋復活」の久々の朗報である。古瀬店主はまだ若い。この地で末永く繁盛することを期待するばかりである。次は、隣の客人がうなりながら食べていた「紅生姜天入りの肉そば」を注文しようと思う。