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「〇がつくような美しいそばを提供したい」 老舗製麺所の3代目が“立ち食いそば空白地帯”で店をはじめたワケ

2021/03/16
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「まるび」から歩いて30分、川崎の人気店「大年」へ

矢口の渡商店街をぶらり

 古瀬店主に挨拶して店を出たのだが、なんだか、いい気候なので、第二京浜を南下し多摩川大橋方向へ歩いていった。橋上からみえる富士山が妖艶に美しかった。もうこうなったら仕事をさぼって、多摩川大橋を渡った先にある川崎の人気店「大年」に行き、おばちゃんに挨拶しよう。「まるび」から歩いて30分で「大年」に到着し、1年以上も訪問できなかったことをお詫びして、結局、「コロッケそば」と「いなり」を頼んでしまった。こちらのつゆもしみじみとうまい。沁みる味である。

多摩川大橋を渡り川崎へ
橋上から富士山を望む
1年以上ぶりの「大年」で女将さんにご挨拶して「コロッケそば」と「いなり」を食べた

ふと思い立って「まるび」の原点、古瀬製麺所へ

 そして、ふと思い立ってJR南武線向河原駅まで歩いて行き、「まるび」の原点、古瀬製麺所を見に行くことにした。歩いて25分で到着したその製麺所の店構えは小さめだが、何か迫力みたいなものが感じられた。そして、店前で一瞬とどまり、ここで3世代に渡り続けられてきた製麺所の光景を想像してみた。粉にまみれ、大きな製麺機と闘い、製麺し、茹で麺も作り、毎日納品してきた姿。本当に頭が下がる思いである。

日差しもまぶしいJR南武線の向河原駅
古瀬店主は古瀬製麺所の3代目でもある。昭和から令和まで続いている店構えは堂々としていた

 人が食べ物を生業として粛々と提供していくということは、それが小さな製麺業であっても、小さな立ち食いそば屋であっても、不断の努力と忍耐力がなければできないだろう。三代目の古瀬博文店主の決意を心深く感じ取った。

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「しなやかで〇がつくような美しいそばを提供したい」という思いから「まるび」という店名にしたと古瀬店主は教えてくれた。自分も非力ながら「まるび」を応援していこうと思った次第である。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

「まるび」

住所:東京都大田区多摩川1-2-23

営業時間:6:00~15:00
(当面は不定休とのことです)

「〇がつくような美しいそばを提供したい」 老舗製麺所の3代目が“立ち食いそば空白地帯”で店をはじめたワケ

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