ポップなバラエティで浮いてしまう理由
逆に言えば土屋太鳳は、軽くポップなバラエティなどの場面では真面目すぎて浮いてしまうような所があると思う。ダウンタウン以降主流になった、力を抜いたラフでルーズなトークがテレビ視聴者の共感を呼ぶ現在のバラエティのスタイルに対し、土屋太鳳はあまりに礼儀正しく、いつも力一杯に対応する。
小さいころから、日本舞踊、バレエ、乗馬といった習い事をいくつもこなす家庭で育てられたせいか、土屋太鳳は今どきの女の子のルーズな所作をあまり身につけていないのだ。おそらく、作品の中で演技として求められれば彼女は現代風に振る舞うこともできる。だが、土屋太鳳本人としてそうしたルーズな「本音」スタイルで先輩たちと話すことがあまり得意ではないのだろう。
そうした不器用さ、真面目さが土屋太鳳にはある。例え話でいえば、「若く美しい女の子なのだから、サラサラと味のあるマンガ風のイラストを描いてくれればそれでいい」という場面で、彼女は美大生のようにしっかりとしたデッサンで絵を描こうとする。だがそうした普遍性、構造をとらえる確かな基礎が重いテーマを持った本格的映画では生きるのだ。
実は驚くほど女性ファンが多い
だからテレビだけを見て、土屋太鳳の半分しか知らないまま誤解をしている視聴者もいる。
WEBメディアの投票などで「嫌いな女優・芸能人」で彼女の名前がランクインするのを見て「土屋太鳳は女性人気が低いのだろう」と誤解した記事が書かれることがある。だが、土屋太鳳の主演映画の完成披露や、彼女のファンクラブイベントなどに足を運べばわかることだが、実際には土屋太鳳のファンの女性比率は若手女優の中でも非常に高いのである。
「表面的に女性のアンチが目につくから、女性ファンが少ない」と考えがちだが、実際は表現者が女性性に近づき触れるほど、女性のファンと女性のアンチは同時に増える。それはコインの両面のように、社会の中で女性が置かれた複雑な状況の反映なのかもしれない。
だが、土屋太鳳を愛する女性たちと、彼女に対して強く反発する女性の距離はいつか縮まり、背中合わせの位置からお互いに向き合う時が来るような気がしているのだ。