文春オンライン

あの小泉進次郎さんが言い出した「脱炭素社会」の憂鬱

日本の未来の敵は、実はドイツではないのか

2021/03/23
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EVも結局はエネルギーで走るんだから

 危機感を抱いたのか、我が国産業界に君臨するトヨタ自動車・豊田章男社長が先日オンライン懇談会で「電動化=EV化じゃないだろ」「日本で走る車を全部EVにしたら、消費電力は10%から15%上がるやろ」と真っ当なことを言いながら怒っていました。まあ、わかる。そりゃ怒るよね、脱炭素社会だから電気自動車(EV)にしようといったって、結局はエネルギーで走るんだからそのエネルギーを供給する発電所を何で動かすか問題ってのは絶対に重要になります。

 しかも、来月9日に予定されている我らが総理・菅義偉さんの渡米においては、これらの自然エネルギーやEV環境規制などでアメリカの要望を飲まされる危険があり、そうだとするならば、沈みそうな菅政権がアメリカ政府の歓心を買うために我らが自動車業界を「お土産」にして、意味のない不利な規制に晒されて壊滅的打撃を受ける危険さえもあります。

©️iStock.com

 かといって、じゃあいままでみたいにジャブジャブとガソリンをタンクにぶち込んで黒煙出しながら日本全国車が走り回るのもどうなのかということで、EVよりも効率(燃費や出力効率)の良いHV(ハイブリッド車)をもっと展開すりゃいいんじゃないかとか、そもそも町全体のエネルギー効率を改善させるために行政・自治体と一緒になってスマートシティやろうやという話もまた出るのは当然の帰結です。

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それでも持て囃される専業EV自動車メーカー

 ところが、世間のカネ余りの証券市場では、テスラ社のような一見専業EV自動車メーカーのようなところが持て囃されます。一時期は超絶にバブってトヨタほか自動車づくりに長年専念していたような各社よりも時価総額が高くなるという不思議現象が発生し、日本国内でたかだか年間2,000台も売れていない電気自動車の仕組みを真に受けて、日本でもテスラ社礼賛の言論が増えていたのもまた事実です。

EV自動車 ©️iStock.com

 もしも、日本でもこれらのEV/HV車を増やしていき、二酸化炭素の排出量を減らしていくんだよという話をするにしても、結局はエネルギーをどこで創り出し、いかに効率よく消費するかという命題が横たわっていることには変わりありません。単純に「脱炭素、だから原子力」とか「いますぐ再生エネルギーの比率を引き上げろ」という話ではなく、2050年に日本社会が持続可能な状態であるときにどのくらいのエネルギー供給体制であるのかという青写真を作って、そこから逆算して「いま何をしなければならないのか」という現状を把握する必要があるわけですよ。