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あの小泉進次郎さんが言い出した「脱炭素社会」の憂鬱

日本の未来の敵は、実はドイツではないのか

2021/03/23
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日本でLNG一本足打法は厳しいという実情

 確かに、自然エネルギー・再生エネルギー中心の電力供給体制に移行するのは理想です。日本も2050年には温室効果ガス実質ゼロを目指すということで、洋上風力発電や潮力発電、あるいは地熱発電のような新たなエネルギー源の開発をどんどこ進めていかないとなりませんが、基本的にこれらのエネルギーは調達コストがとても高く、LNGガス(天然ガス)や一部石油石炭も含む火力発電への依存から脱却するのはなかなか大変です。

 廃炉コストや核廃棄物処理コストを抜きにすれば二酸化炭素を出さず環境負荷が小さい原子力発電を移行過渡期に使おうぜという議論もまたありますが、日本では原子力と聞くだけでデモ隊が官邸にやってくるぐらいアレルギー反応が強いのもまた事実です。定常的に電力を供給するベースロード電力をなんだと思ってるんでしょうね。一方で、電力自由化を単なる電力値下げと純粋に思ってたみなさんが騙されて、2021年1月のLNG高騰で超高額な電気代を支払わされそうになって政府が救いの手を差し伸べたりする話もあるぐらい、LNG一本足打法は世界のホームラン王ですというわけにもいかないのが実情です。

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EVにしてもエネルギー供給はどうするんだという問題

 つまりは「脱炭素社会やぞ」ということでいくら旗を振ったところで、風力や太陽光など再生エネルギーは日本の地勢的に無理だし常時発電できるほどではない、地熱も大規模発電がむつかしそうだ、原子力発電所も国民感情としてすぐには増やせないし核廃棄物どうすんだよとなれば、いくら「二酸化炭素をいっぱい出すLNG発電をやめよう」と左翼が騒いだところで代替案がなくて詰みなわけですよ。

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 それでも、世界の潮流は脱炭素社会へ向かおうという謎のコンセンサスと共に競争が始まっています。

 昨今では、電気自動車(EV)のメーカー大手の米・テスラ社が、このカーボンプライシング(炭素排出権)の排出枠販売で大きな利益を上げて話題になっていましたけれども、これからの自動車は純然たる電気自動車や水素燃料によるものを中心にやるべきだと言われても「その大量の電気自動車が町中を走り回るために必要な電力は、誰がどう供給するんですか」というところで手詰まりになります。