コロナ禍のいま、機内食が静かに注目を集めている。国際線利用客の減少にともない、機内食の製造数が落ち込むなか、2020年12月にANAが機内食のネット販売を開始した。すると、これが想定外の人気を呼んだ。2021年2月には発売開始後30分で完売になってしまったこともあるほどで、すでに売り上げは1億円を突破している。また、ANAは2021年3月31日、羽田空港に駐機したB777-300ERの国際線機材を用いて『翼のレストランHANEDA』を実施し、ファーストクラスとビジネスクラスの食事を提供する予定だ。料金はファーストクラスで59800円、ビジネスクラスで29800円である。
成田空港近くにあるJALアグリポート直営の農家レストラン「DINING PORT 御料鶴((ごりょうかく)」では、エコノミークラスの機内食やJALラウンジのみで提供されてきた門外不出の「JAL特製オリジナルビーフカレー」が食べられる。筆者が訪れた2021年3月上旬は、平日にもかかわらず予約で満席の盛況だった。なお、サービスも制服姿のJALのキャビンアテンダントが行うが、窓の外は房総の典型的な農村なので不思議な気持ちとなる。
世界初の民間航空機の機内食
飛行機で海外に行けば、好むと好まざるとにかかわらず食べることになる機内食。その歴史は100年以上にもおよぶ。ここでは機内食の進化の過程を駆け足でふりかえってみたい。
世界初の民間航空機の機内食はどのようなものだったのだろうか。それは102年前の1919年、イギリスの航空会社ハンドリー・ページ・トランスポート(現在のブリティッシュ・エアウェイズ)のロンドン発パリ行きの便で提供されたものだったといわれている。この機内食はサンドイッチとフルーツにチョコレートというごく簡単なものだが有料。現在の貨幣価値になおすと900円ほどだった。