ショッピングモールのトイレで赤ちゃんを産み落とし殺害したとして、栃木県の女子高校生が逮捕されたのは1月28日だった。報道によると、事件が起きたのは前年12月18日。一緒に買い物に訪れていた友人が、トイレから出てこない女子高校生を心配して警備員に通報。トイレで血まみれになって倒れている女子高校生とハサミで首を切られた赤ちゃんを発見したというものだ。逮捕までに40日かかっており、慎重な捜査が行われたと考えられる。
妊娠相談窓口に届いたメール
女子高校生がトイレで産み落とした日から遡ること10日余り、12月7日には東京・大井町のマンションで赤ちゃんを死産した20代の女性が即日逮捕された。死産にもかかわらず、遺体を黒いビニール袋に入れていたことで死体遺棄罪に問われ、さらに報道各社が所轄の大井警察署の発表文のままに実名で報道した。
女性の件で最初に大井署に連絡したのは熊本市にある慈恵病院の蓮田健院長だった。
蓮田さんが女性の状況を知ったのは、女性が同院の妊娠相談窓口にメールしたことによる。死産した赤ちゃんをどう葬ったらいいのかわからないと記した女性と直接電話で話した蓮田さんは、妊娠期間の体調の変化を時系列で聞き取り、妊娠6~7ヶ月での死産であると推定。
ひとが家で亡くなると、かかりつけ医に連絡して死亡診断書を受け取るのが通常の手続きだが、かかりつけ医がない場合は警察を呼ぶことになる。警察が事件性はないと判断すれば死体検案書を受け取り、火葬の手続きに進むことができる。だが、女性は医療機関を未受診だった。
「黒いビニール袋」に入れたことで即日逮捕
蓮田さんは女性に了解を得たうえで、最寄りの大井警察署に連絡した。そして警察官が女性のもとを訪れ、そのまま彼女を逮捕したのである。
逮捕の判断を決定づけたのは「黒いビニール袋」に入れていたことだと考えられる。本人は「捨てた」のではなく「置いていた」のだが、警察は遺棄と断定し、即日逮捕した。しかし、蓮田さんによると、妊娠6~7ヶ月という早い時期に死産で生まれた嬰児は体が羊水を吸収してブヨブヨになっている(浸軟胎児)と考えられる。一般に想像する新生児の様子とはかけ離れていて、とても布団に寝かせるような状態ではないという。加えて、慈恵病院は女性に赤ちゃんを弔う意思があったことを確認していた。