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米「アリゾナ・ウィンターリーグ」への挑戦

 高校生が抱えるにはあまりにも大きな期待とプレッシャー。奇しくもシーズンが終わるとチームの親会社が撤退し、監督も解任。吉田もチームを去ることになった。あまりにも大きなダメージだったが、前例や慣習などあまり気にしない行動力で、吉田は新たな道を切り拓くことになる。

「アメリカで『アリゾナ・ウィンターリーグ』というのをやっていると聞いたんです。約1カ月間、試合をするんですけど、そこでは独立リーグの監督が指揮を執っていて、目にとまれば独立リーグでプレーできるということでした。ツテがあった? いえ、インターネットで検索したら募集要項が出てきて自分でエントリーしたんですよ」

2008年撮影 ©️文藝春秋

 まさに運命を手繰り寄せるのは自分次第。吉田は、尊敬するウェイクフィールドのいるアメリカのマウンドに立ちたいと切に思ったのだという。日本から来た小柄な女性ナックルボーラーはウィンターリーグで存在感を示すと、チコ・アウトローズのGMであるマイク・マーシャルに気に入られ、同球団に加わることが決定した。

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初打席で初安打と初打点!

 2010年5月、公式戦で先発として初登板すると3回5安打4失点。苦しいデビューであったものの、一方で打撃において初回の第1打席、満塁のチャンスでライト前タイムリーを放ち、初打席で初安打と初打点を挙げる離れ業を演じた。これは女性選手として歴史的意義があったことから、試合で使用したユニフォームとバットはニューヨークにあるアメリカ野球殿堂博物館に展示されることになった。

米ではまさかの打棒で野球殿堂博物館入り ©️文藝春秋

 アメリカでの経験を吉田は次のように言う。

「アメリカは広いのでバスでの移動が大変で、どこに行くにも15時間ぐらいかかるんです。選手たちは日本以上にハングリーでしたし、這い上がってやろうっていうエネルギーを強く感じました。そういう意味では本当に経験できて良かったなって思っているんです。本当に少しの期間ですけど結果を残せた時期もあったので、それをつづけることができたらなって思ったんです。もっとナックルの精度を高めることができたら、もう少しやれたんじゃないかって」

 その後、吉田はアウトローズをはじめ、マウイ・イカイカなどの米独立リーグのチーム、関西独立リーグの兵庫ブルーサンダーズ、BCリーグの石川ミリオンスターズなど、男子選手と一緒にプレーをした。