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目の前で岡本が敬遠されたら「返り討ちにしたる!」

 ドラフト会議の数週間後、再び取材で智辯学園を訪れる機会に恵まれた。

「いやー、まさか巨人の1位とは」

 そう話す小坂監督に「岡本くんなら巨人のドライチというプレッシャーに押しつぶされることなく、成功しそうな気がします」と水を向けたところ、指揮官は小さく何度もうなずき、「(プレッシャーとか)感じないんですよね」と言って笑い、こう続けた。

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「人に嫌われることは絶対にないのでね、岡本は。人間として角がないし、人がとにかくよすぎる。みなさんにかわいがられながらやっていけると思う。ほんと頑張ってほしい」

 そこへ廣岡がやってきた。

「こんにちは!」

「こんにちは。廣岡くんって岡本先輩とよく話した?」

「めっちゃしましたよ。バッティングの話もよくしました」

「そうなんだ。なにか印象に強く残ってる話ある?」

「岡本さんの後ろで4番を打つことになって、アドバイスを求めた時のことはよく覚えてます。聞いたんですよ。『どんな心構えで4番打ってましたか?』って」

「そうしたら?」

「『4番がどうとか、そんなん考えんな! まだ2年生なんやからもっと軽い気持ちで気楽にいけ。自分のバッティングをやりきることだけ考えたらええねん!』って言われました。なんかすっと入ってきましたね」

「へぇ~、いいアドバイスじゃないですか。実際、3・4番コンビ組んで、自分の前で岡本先輩が敬遠された時ってどんな気持ちでした?」

「嫌じゃなかったですよ。『そうくるならこいや。返り討ちにしたる』みたいな感じで。自分との勝負を選択された悔しさとか『ここで打たなきゃ』みたいなプレッシャーよりも、チャンスでたくさん打席が回ってくるうれしさの方が勝ってました」

「たくましいねぇ~」

 話の流れで巨人ファンであることが判明した廣岡大志。

「岡本さんには『おまえも1年後に絶対プロにこい! 一緒にやろうぜ!』って言われました」

「一緒にやれたらいいねぇ~。そんな日がやってきたら、巨人ファンの自分、感動ものやわ。智辯コンビが巨人の3・4番打っていたら、号泣ものですよ」

 未来はなにが起こるかわからない。あらためてそう思い知った7年後の2021年春。

 とりあえず号泣の準備、できてます。

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