高齢化社会の加速につれ、近年問題視されているのが“孤立死”だ。「国の世話になるなら死んだほうがマシ」と、生活保護を受けずに困窮した生活を続け、病院にも行けずに栄養失調から死に至るケースや、未婚の年配女性が「人前で裸になったり、肌を晒したりするのは恥」と検査や手術を拒んで病気を進行させ、自室で死を迎えるといった例も現に起こっている。
ここでは、そうした高齢化社会の加速する日本の諸問題に、ノンフィクション作家の新郷由起氏が迫った書籍『老人たちの裏社会』(宝島社)を引用。いつ我が身に降りかかってもおかしくない孤立死の現状について、具体例と共に紹介する(全2回の2回目/前編を読む)
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「厄介ごとにはかかわらない」という空気
生活に足る経済力があれば、無縁のまま生き続けられるのが現代社会だ。閉じこもりの生活を貫き、孤立死への道を増長する背景には「自活可能な経済力」を抜きに語れない。これに、過剰な「プライバシー保護」の空気が追い討ちをかける。
三十余年にわたり葬祭業に従事してきた家族葬専門葬儀社「オフィスシオン」会長の寺尾俊一氏が言う。
「本人が望めば『(自宅から)一歩も出たくない』が許され、認められる世の中です。『厄介ごとにはかかわらない』時世において、孤立死の現場は最も敬遠されるもの。第一発見者は容疑をかけられることもあり、何かと手間や面倒がついて回るため、“死んでいるらしい”気配があっても『誰かが通報してくれれば』と先送りされ、発見が遅れる事例は多数にのぼります」
自活能力のあることが裏目に
これには“お年寄り”と呼ぶにはまだ若く、自活能力のあることが裏目に出る。
例えば、生活保護受給者や後期高齢者の場合では民生委員や家主などが注視し、場合によっては定期的な訪問も受ける。介護保険のサービス利用者宅には絶えず人の出入りがあり、高齢になるほど施設入居率も増える。が、経済力があって、見た目に健康そうな中高年男性は周囲からも注意を払われにくいのだ。
「新聞や牛乳の配達員も、配達物がかなり溜まっていても『旅行かもしれない』『詮索するのは失礼』と、見過ごすケースは多い。また、故人が離婚した男性の場合では、別れた妻へ連絡を取ってもほぼ九分九厘、赤の他人扱いで取り合ってはもらえません」(同前)