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“日本におって寂しかった”“ここで死んでもいい” 家族にも見捨てられフィリピンで路上生活を送る「困窮邦人」の末路

『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』より #2

2021/04/19
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帰国後2週間でフィリピンに再入国、半年後には再帰国

 しかし、日本に帰国してからわずか2週間後、吉田はフィリピンに再入国していた。貧困ビジネスの食い物にされた挙げ句、関係者に借金を返すためにフィリピンに戻らなくてはいけない事情でもあったのか。

 その後、さらに驚くべきことが判明した。吉田はフィリピンに舞い戻って約半年後には、また日本に帰国を果たしていたのである。私は吉田と1年近く接触を続け、時には一緒に食事をし、バクララン教会から帰宅する際には、多少の小銭も渡していた。しかし、吉田がフィリピンに再入国してから帰国までの半年間、結局彼から私には一度も連絡はなかった。私は自分の目線と彼のそれとが全くかみ合わないことを再確認した。ひょっとしたら、取材に応じる代わりに、いつか帰国費用を援助してもらえるのではないかと期待していたのだろうか。あるいは、路上生活者の心境を理解しようとした安易な私の思い上がりが溝を生んでしまったのか。

写真=著者提供

 吉田は、今頃日本でどんな生活を送っているのだろうか。仕事に就き、もう二度とフィリピンには戻らないと真面目に過ごしているのだろうか。もしくは、また日本の現実から逃れるべく、フィリピン行きを夢見ているのだろうか。残念ながら、私にはその後の彼を知ることはできなかった。

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【前編を読む】老婆がいきなりしゃがみ込み放尿… 女性を追いフィリピンでホームレスになった“困窮邦人”のリアル

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

“日本におって寂しかった”“ここで死んでもいい” 家族にも見捨てられフィリピンで路上生活を送る「困窮邦人」の末路

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