しかし、恋愛経験が少ないせいか、お見合いでの会話は盛り上がらない。両親に反対されないために家庭環境を確認しようと、初対面で「親御さんはどちらの会社にお勤めでしたか」と尋ねたら、露骨に嫌な顔をされた。
「勉強は頑張れば正解が分かるけど、婚活には答えがない。やればやるほど『お前は欠陥人間だ』と否定されたような気持ちになった」
3年間、土日のどちらかを婚活にあてるというノルマを自分に課したが、成果は挙がらず、心身ともに疲弊していった。ある日、十円玉の大きさの円形脱毛症を見つけたとき「もうやめよう」と踏ん切りがついた。
親心ではなく自己保身で代理婚活に励む母を見て
美帆さんと入れ替わるように、母親が熱心に代理婚活の交流会に参加するようになった。しかし、母が気に入るのは、「最終学歴が早慶以上」「年収1000万円」「医者」「総合商社勤務」など、あからさまにスペックが高い男性ばかり。婚活を3年間続けてきた美帆さんには「高望みしすぎて絶対に自分とはマッチングしない」と分かるが、後ろめたさから口出しはしないでいる。実際、これまで何度も断りの連絡がきているようだった。
美帆さんは「みっともない」という言葉を浴びてから、母親の行動が親心ではなく自己保身なのではと疑うようになった。美帆さんに対しては結婚しないことをなじる母親が、法事の席で親戚に「相手はいるんだけど、キャリアを大切にしたいから、理解できる人かを見定めているんですって」と嘘の説明をしているのを聞き、やはりと確信した。ただ、老いを見せ始めた両親を落胆させたくない、という気持ちとも葛藤している。
好きに生きていいよ、と言ってくれたら楽になれるのに──。
そう言って、美帆さんは声を震わせた。
幸せになるのを妨害する親
実は、私の周囲には、美帆さんのように母親との関係に悩む女性が複数いる。高学歴のキャリアウーマンに多いのが特徴だ。
国家公務員の40代半ばの麻耶さん(仮名)は、一人っ子で母親と二人で買い物や海外旅行によく出かけるほど仲良しだ。
恋愛についても、全て母に相談してきた。約10年前、友人の紹介で知り合った交際相手からプロポーズされたものの、断った。交際中に両親に会わせた後、相手の職業や学歴を聞いた母が「凡人すぎる」「容姿がいまいち」と批判したからだ。