生涯未婚率が増加の一途をたどる日本社会。直近の国政調査では18~34歳で交際相手がいない男性は約7割、女性は約6割という結果が出ている。現代は簡単に結婚することができない「婚難」の時代といっても過言ではないだろう。さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、新たな出会いに期待するのも難しいのが現状だ。そんな中、オンラインに婚活の活路を求める男女も少なくない。

 ここでは、共同通信社に所属する筋野茜氏、尾原佐和子氏、井上詞子氏ら3名の女性記者が現代人のリアルな結婚観に迫った『ルポ 婚難の時代 悩む親、母になりたい娘、夢見るシニア』(光文社)を引用。Zoomを活用したユニークなイベントを次々と企画する婚活支援サービス「LMO」(高田康太社長)などの取材を通し、オンライン婚活の実態を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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オンライン→会ったその日にプロポーズ

 取材が一段落ついた6月中旬、高田さんから、「熊本と東京で成婚が決まったカップルがいる」と連絡がきた。聞けば、告白も交際もオンラインだけだという。今までいろいろなカップルの取材をしてきたが、聞いたことのない展開でとてもわくわくした。

 7月に入り、二人へオンラインで取材をすることができた。熊本県に住む紀徳さん(31歳)と東京都に住む綾子さん(43歳)の夫婦で、6月中に入籍していた。

 二人は2020年4月26日にLMOが主催したオンラインの婚活パーティーで出会った。紀徳さんはコロナが流行し始めた頃から婚活を始め、綾子さんは、

「コロナで友達にも会えないし、どこにも出かけられないので、婚活というより誰かと話したくて参加した」

 と振り返る。そのときは、9人が参加したものの二人の関係は、特に進展しなかった。

 5月20日のパーティーで再会したとき、運命が動き出す。

 全国転勤があるホテルに勤務している紀徳さんは、綾子さんが「結婚したらどこに住んでもいいです」と気負うことなく話す姿に感動した。綾子さんも、以前話したときよりも話し上手になった紀徳さんの向上心に惹かれるようになった。2日後にLMOが仲介したオンラインでの一対一のお見合いに参加し、紀徳さんが「交際しませんか」と告白して交際がスタートした。

 もともと熊本と東京で距離がある上に、コロナ禍で会うことはかなわない。二人は毎日ビデオ通話で、お互いの過去や年の差、仕事のこと、結婚後の夫婦像などを率直に話し合った。

写真はイメージ ©iStock.com

 料理や入浴で席を立つときも、通話をつなぎっぱなしにして、すっぴんやパジャマ姿まで見せるなど、できるだけ生活感を共有するようにした。私はその話を聞いて思わず「すごいですね!」と声を上げた。つきあい始めの段階で、化粧をする前の無防備な顔を相手に見せるのは勇気がある、と思ったからだ。

 すると綾子さんは、

「会って時間を無駄にしたくなかったので。オンラインだからこそ、冷静にお互いのことを知ることができた。だらだらと会っていたら、逆にうまくいかなかったかも」

 と説明してくれた。紀徳さんも「すっぴんも気にならなかったし、むしろ素の姿を見せてくれてうれしかった」という。

 そして、緊急事態宣言が明けた6月19日、ついに二人は熊本で初めて会うことになった。