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BEVの経済的メリットの薄さ

 消費者目線に立てば、現状ではBEVにハイブリッド以上のメリットを感じにくいのも確かである。

 BEVの電気代と、ハイブリッド車のガソリン代を比べるとどうか。エネルギー効率に優れるテスラ「モデル3 SR+(6.7km/1kWh)」と、トヨタ「プリウス(22.1km/L)」*について、電気代を「1kWhあたり30円」、ガソリン代を「1Lあたり130円」として計算すると、おおよそ2割程度BEVが安くなる。

* いずれもEPA(米環境保護庁)による公表値

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 バッテリー性能や制御システムの改善が進めば、さらにBEVが圧倒するようになる可能性も大いにあるだろう。とはいえ現状、BEV車種の車両代の高さや、自宅に充電設備を用意するコストを考えると、初期費用の差が埋まるのは数十万km走った時点になると考えられる。BEVの各種補助金を考慮したとしても、経済面のメリットは薄い。

そもそも日本において「BEV=エコ」は成り立つのか

 国内における発電方法の偏りも、BEV化の阻害要因となっている。

 石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を利用した火力発電が7割以上を占める日本において、仮に自動車業界がBEV化を進めたとしても、「カーボンニュートラル」は到底達成されえない、というわけである。

 実際のところ、現段階の日本の発電事情のなかで「BEVがハイブリッドより環境性能に優れている」とは断言しにくい面がある。

 もともと、BEVの生産工程においては大容量バッテリー製造のため、通常のガソリン車よりも多くのCO2が排出される。研究機関によって試算は異なるが、少なく見積もったとしても生産時の排出量の差が埋まるまでには7万~8万kmの走行が必要となる。

 とはいえもちろん、再生可能エネルギーの比率が高まり、バッテリー製造効率が高まるほど、BEVがカーボンニュートラルに近づいていくことは確かであり、BEV化への注力は避けられないといえる。

虎視眈々と巻き返しを目論むトヨタ

 国際的な競争力を維持するうえで、「環境が整ってから本格参入」というのでは到底間に合わない。ここで注目されるのが、BEVへの参入に慎重姿勢を見せてきたトヨタの動向である。

 政府から2030年代のガソリン車禁止の方針が示されて以来、豊田章男社長はBEV化への無批判な追従に警鐘を鳴らしつづけてきた。トヨタが有力なBEV専用車種をいまだに発売していないこともあり、章男社長の発言をめぐり「トヨタはBEV競争に勝つ自信がないのでは」といった声も一部で囁かれている。

 けれども当然、トヨタが何の用意もしていないはずがない。2020年12月の段階で、トヨタはすでにBEV専用の開発プラットフォーム「e-TNGA」の存在を明らかにしている。これは現在トヨタが採用する開発プラットフォーム「TNGA」のBEV版である。

 TNGAは、部品やユニットを複数車種で共用しながら、効率的に多様なタイプ・サイズのバリエーションを展開していく手法である。この手の開発方式は特段珍しいものでもないが、トヨタは共用化による品質向上と、商品展開力の面で抜きん出ている。