TOYOTA新世代の看板モデルはBEV専売のSUV車
4月に行われる上海モーターショーで、「e-TNGA」の第一弾となる新型SUVの登場が先日発表された。これが示しているのは、「トヨタがようやくBEV専用モデルを1台出した」ということではない。グルーピング開発により、BEVのラインナップを整える地盤が形成されつつあるということだ。
実際に、レクサスが3月30日に行った発表においては、2025年までに20の新型・改良モデルをリリースし、そのうち半数以上をBEVまたはハイブリッドとする方針が示された。
新世代の看板モデルとして披露されたのはBEV専売のSUV「LF-Z Electrified」であり、3秒で時速100kmに至る加速性能、600kmの航続距離と、世界トップクラスと十分に張り合えるスペックが予告されている。このプラットフォームを軸としながら、世界各地のニーズに応じたラインナップが展開されていくわけである。
「全固体電池」搭載によるテイクオーバーを狙う
さらに、トヨタは「夢のバッテリー」と呼ばれる「全固体電池」についての特許を1000件以上取得している。現状のリチウムイオンバッテリーに比べ、小型化・大容量化が容易であり、充電時間も大幅な短縮が見込める。耐久性や安全性にも優れ、BEV界に革命をもたらす技術として期待されている。
トヨタは2020年代前半のうちにこの全固体電池の実用化を目指す。今年中には、全固体電池を搭載した試作車の公開も予定されている。
総じて、BEVが世界の主流となったとしても、トヨタが商品力の面で遅れをとるとは考えにくい。むしろトヨタにとって最大の懸念事項は、国内のエネルギー供給という問題、すなわち「発電方法をクリーン化しつつ、BEV普及後の電力供給も確保する」という国家規模での課題である。
小泉環境相のメッセージ
つまるところ、自動車産業の変革において日本が取り残されないかどうかは、国内メーカーの競争力云々よりも、政府主導のエネルギー計画の行く末にかかっていると言えそうである。もちろんこの点については、小泉進次郎環境相などが「脱ガソリン車」の立場を強く打ち出し、BEVや再生可能エネルギーへの取り組みが必須であることを繰り返し強調しているから、きっと安心できるのだろう。
ちなみに、小泉氏は2030年までに環境省のすべての公用車を「電動車」とすることを発表している。ただし、この「電動車」にはBEVだけではなく、ガソリンを使った「ハイブリッド」も含まれる。
公用車と思しきアルファードに小泉氏が乗り降りする姿も見られるが、同車種はハイブリッドモデルでも1Lあたり7~8kmしか走らない。1km走るごとに300gほどのCO2を排出する計算であり、プリウスの3倍ほどの数字だが、ともかく「モーター」がついているから問題ないのだろう。