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「命を返して欲しい」元特捜検察のエースとトヨタ…レクサス暴走致死事件“アクセルペダルの行方”と重い量刑

「元特捜検察のエース」対「警察+トヨタ」裁判 #2

2021/02/26

 2018年に起きたトヨタの最高級車レクサスの暴走による死亡事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)などで起訴された元東京地検特捜部長の石川達紘弁護士に対し、東京地裁は2月15日、禁錮3年、執行猶予5年(求刑禁錮3年)の判決を言い渡した。弁護側は「暴走は車の不具合が原因」と無罪を主張したが、裁判所は、「誤ってアクセルペダルを踏み込んだ」とする検察側に軍配を上げた。元特捜検察のエースがプライドを賭けた約1年にわたる裁判を振り返る。(以下、敬称略))(全2回の2回目/#1を読む)

「足が届いたかどうか」をめぐる攻防

 さて、公判。2019年1月24日の再現検証で、事故時の運転体勢からして左足がアクセルペダルに届いていなかった、と確信する石川は、その事実が固まれば、EDRの解析など以前に暴走の責任がないことがはっきりすると考えていた。

 そのため、2020年2月18日の第2回公判で、石川側は、19年1月24日、2月8日の再現検証にも立ち会っていた検察側証人の警視庁交通捜査課交通鑑識係警部補の寛隆司を攻め立てた。

 寛は整備士資格のほかEDRデータの解析ツールメーカーのアナリスト資格、警視庁の交通事故解析研究員の資格を持ち、事故車のEDRデータを解析した鑑定書を作成していた。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 松井巖弁護士がまず、2月8日の再現見分について質問した。松井は元福岡高検検事長。検察でも有数の捜査、公判のプロだった。大柄で貫録がある。松井は、石川の代役の警官の右足をドアに挟んだ状態での見分でないことを寛に確認したうえで、左足がアクセルペダルに「届いた」とする写真について「とてもアクセルを底まで踏み込んでいるように見えない。あなたにはそう見えるのか」と突っ込んだ。寛は「写真ではなくて、私は肉眼で、目視で踏まれているのを確認していますので、先生がおっしゃっているのは写真の撮れ具合で。実際には、これはちゃんと踏めています」

「私の目には、左足がアクセルペダルに触るか触らないか分からないようにしか見えない」

「踏んでいると見えます」

「あなたの目じゃなくて、はっきりとわかる形の写真、ないしビデオを証拠化してここに付けるべきだったのでは」

 後輩の立ち会い検事が「異議。誤導だ」と指摘したが、松井は引かなかった。

「なぜ、完全に踏み込んだ写真を撮らなかったのか」

「その写真がそうなんですとしか申し上げられない」

「カミソリ達紘」と立ち会い検事の問答

 続いて、被告人の石川本人が質問に立つ。現役時代は「カミソリ達紘」の異名をとった。

 1月24日の見分について「あなたは、私の目の前で事故車の座席の位置を測定してきて、曲尺(かねじゃく)で私の目の前で示されましたね」

「私が計測しました」