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裁判所は検察を全面支持

 弁護側は、出川証言で検察側のEDRデータをもとにした起訴事実がぐらついたとの心証を固め、「検察側の立証不十分で無罪の可能性もある」と希望を膨らませたが、判決はその思いを木っ端みじんに砕いた。

 判決は、弁護側が、「専門性に欠ける」と指摘した検察側証人について「適格性や資質に問題は認められない」と一蹴。圧痕をめぐる論争について「アクセルペダルを最大に踏み込んだ状態でさらに前方から衝突などの強い力がかかることで生じるものである」との寛証言はEDRデータにも整合し合理的で信用できるとした。

 EDRデータの信用性についても「私企業の設計・製造に係るものとはいえ(略)記録されたデータの正確性の高さから交通事故解析の資料としても使われ(略)自己診断機能も付いている。専用のツールを用いて正しい手順によれば誰が読みだしても同じデータが得られる上、システム上データの改変はできない仕様になっている」と認定。EDRデータに相互に矛盾する記録がある、との弁護側の主張について、それを否定する寛や吉田の証言に整合性、合理性がある、として退けた。

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※写真はイメージ ©️iStock.com

 そのうえで「本件車両の構造上、その一部に不具合が生じたとしても不具合の連鎖が生じて暴走状態に陥る可能性を低減させ、また生じた不具合が記録され易くする工夫が施されている」と認定。「事故時の発進・走行の原因となるような不具合が本件車両に存在したという現実的な可能性は考え難い」と結論づけた。

 石川側の「足が届かなかった」との主張については、「運転シート上における臀部の位置等によっては、被告人の左足がアクセルペダルを踏み込むことは可能であった(略)具体的な被告人の姿勢等については証拠上不明であるが、本件における罪となるべき事実の認定に支障を来すものではない」とし、さらに「被告人自身の再現には恣意性を完全には排除できない」とした。つまり、石川が「ずる」をして足を実際より縮めていた疑いが残る、との判断だ。これは石川のプライドを大いに傷つけたとみられる。