ぽっちゃりした36歳、取り分は5000円
しばらくして、店に入る時に頼んだ飲み物を持って女が戻ってきた。電気の入っていないコタツに座って、女と向かい合う。
失礼を承知で年齢を尋ねると、36歳だと言った。ほっそりとしてモデルのような体型をした女が多かった青春通りの女たちと違って、ぽっちゃりとしている。
「大阪の出身なんですよ。まだ3ヶ月しか経っていないんです。それまではヘルスにいて、こっちの方が稼げるって聞いたから、働きはじめたんですよ」
料金1万円のうち半分の5000円が彼女の取り分になるのだという。
部屋はそれぞれの娼婦にあてがわれるということもあり、室内はカーテンからタオルまで彼女が好きだというキティちゃんグッズで占められていた。ポップな雰囲気を彼女の装飾品は醸し出していたが、部屋そのものは天井も高く、最近の建築からは感じることができない豪壮さがあり、たった15分ほどの滞在では勿体ない気がする。ひと昔前には、泊まることができたというが、今では禁止されているという。そう考えると、売春という行為は昔と比べ味気ないものになっていることは否めない。
「気に入って来てくれるから、変なお客さんがいないんですよ」
私が店に入ったのは午後1時、彼女のシフトは午前10時から午後5時まで、ちなみに店は深夜12時までの営業。夜働いた方が稼ぎが良さそうだが、昼間働く理由はこの商売を他人に知られたくないからだという。
「この仕事は気が楽でいいんです。それまでは普通の会社で働いたこともあったけど稼ぐのは大変だし、水商売はお客さんとの駆け引きが面倒くさかったりね。ここはお客さんも私を見て気に入って来てくれるから、変なお客さんがいないんですよ。酔っぱらっていたり、汚いお客さんは、おばちゃんが入れないしね」
おばちゃんとは女性と一緒に店の入り口にいる遣り手婆のことだ。遣り手婆は元々この仕事をしていた女性もいれば、他の仕事から転職してくる人もいて様々だという。客からしてみれば、いちいち声をかけてきて、うるさい存在に思える遣り手婆も娼婦たちのセーフティーネットという非常に重要な役割を担っていることがわかる。彼女たちの仕事にとって遣り手婆はなくてはならない存在であるのだ。
「おばちゃんが声をかけてお客さんを呼んでくれて、お客さんを見れば入ってくるのか、冷やかしなのかすぐわかるんですよ」