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「瀕死のキャラが何の理由もなく根性で立ち上がるのとか見ていると…」  インパルス板倉俊之が『進撃の巨人』にハマったわけ

「瀕死のキャラが何の理由もなく根性で立ち上がるのとか見ていると…」  インパルス板倉俊之が『進撃の巨人』にハマったわけ

インパルス・板倉俊之インタビュー#1

2021/04/08

――根性論や綺麗事の漫画、苦手なんですね(笑)。

板倉 瀕死のキャラが何の理由もなく根性で立ち上がるのとか見ていると、「は? なんで?」ってなっちゃうんですよ(笑)。だから、『ジョジョの奇妙な冒険』みたいな“理由のある勝利”がちゃんと描かれる作品が好きですね。

 綺麗事に関して言うと、暴漢に襲われるミカサをエレンが救う二人の出会いのシーン、あそこでハマりました。「うお、(暴漢を)殺すんだ!」って。あの場面って現実だったら殺るしかないじゃないですか。今何かにつけて暴力反対が叫ばれますけど、それは大前提としたうえで、この現実の世界でも「誰かの暴力に救われていますよ、あなたたち」って場面もよく日常で感じるんですよ。そういう目を背けがちな部分を逃げずに描き切ったのにやられました。

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理由のないことは起きない、謎は必ず解明する

――ここからまだ読んでいない読者に向けて、『進撃』の魅力を語っていただきたいのですが、まずはそのストーリーの妙についてお聞かせください。

板倉 『進撃』って、謎が謎を呼ぶミステリー展開がベースにありますけど、必ず解明されるから途中であきらめないで、と言いたい。少年漫画って人気商売なので、色々な意見が入って作者の思い通りにできず、割と謎を投げっぱなしで終わるものも多いじゃないですか。でも『進撃』はブレずに進んでいくので安心してほしいです。

――そんな作劇の部分に関して、板倉さんは今年の1月25日に『鬼の御伽(おにのおとぎ)』という新作小説を発表なさるなど、小説の執筆もされていらっしゃいますが、ご自身の作品と『進撃』の間に共通項など感じますか?

板倉 自分で書くものに関しては“サプライズを必ず用意する”、“理由のないことは起こさない”というのが信条です。現実では不思議なものを目撃しても「あれ何だったんだろうな」で終わることも多いですが、僕はそういうのは物語のなかでは許されないと感じているので。そうやって考えると謎にきちんと光を当てていく『進撃』とは、恐縮ですけど僕の小説と近しい部分があるかもしれませんね。

ミステリー、アクション、そしてリアルな人間ドラマも魅力

 あと、さっき『進撃』は謎が謎を呼ぶミステリー展開がベースって言いましたけど、そこにアクションや濃厚な人間ドラマまでついて来るので、かなりお得な作品です。悪党・脇役にまでドラマありますから。不正を働いていた憲兵団の人が、「こういう役には多分順番がある…」って言ったセリフが後々効いてくる場面とかね! あと、ニック司祭とか最初超ムカつくのに、先読み進めると「司祭の立場ならこうなるか」とか……、すみません脱線しました。

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