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――暖炉の前で〈ハウル〉と〈カルシファー〉が語らうシーンがありますよね。物語の本質が伝わってくるような静かで内省的な会話が、とても印象に残っているのですが。

我修院 ああいったシーンは、台本を最初から最後まで読んで、すべてを頭の中に入れておかないと、気持ちが出てこない。役者と一緒。だって、台本を読みながらやっていたら口なんて合わせられない。「声優さんはいいよね。台本を覚えなくてもいいから」なんて仰る方がいるけど、僕からしたらとんでもない間違いですよ。

 ト書きはもちろん、キャラクターの動きもすべて把握していないと。「なにすんだよ!」という台詞なんかも、ちゃんと体を揺らして手を払いのけるように動かないとリアルに聞こえない。

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『ハウルの動く城』より。暖炉を前にしたシーンからは、ハウルとカルシファーはお互いが「唯一無二」の存在であることが伝わってくる

――では、『ハウル』の時も台本には書き込みをされたりは?

我修院 書いてましたね。なにか引っ掛かる場合は、休憩に入ったら監督さんに「次のシーンですけども、こちらはこのような感じでやったらよろしいですかね」とお伺いを立てておく。それは子役だった頃にマネージャーだったおふくろに言われて守ってきたこと。黙って勝手にやって注意されるより、事前にお伺いを立てておいたほうが間違いないですから。どんな監督だって、悪い気はしないはずですよ。作品のことをきちんと考えているわけだから。

“本当に食べてる感”が欲しいと言われた「ベーコンエッグ」のシーン

――〈カルシファー〉が自分の炎で卵とベーコンを焼きつつ、それらを食べてしまうシーンは咀嚼する音にものすごくシズル感があって、好きなシーンにあげる人も多いと思います。

『ハウルの動く城』より。卵の殻やベーコンエッグを食べるカルシファーの姿まで、シズル感にあふれる名シーン
『ハウルの動く城』より

我修院 “本当に食べてる感”が欲しいと言われたんで、ちょっと口に指を入れて「アン、アン、ウン、ウン、アン、アン」っていうふうにやりましたね。卵を割る音はリアルだけど、あれは擬音の方が違う素材を使って「バリバリ」って音を出してやっている。本物の卵を使うと、かえって違和感が出ちゃうそうなんです。その擬音と僕の声が一緒になると、ああいった臨場感に溢れた感じになる。